人はカップルでいるべきという規範が鍵を握っている。かつて、地位への欲求がいかに人生を支配しているかについて自著で述べたことがある。独り者は“負け犬”で、パートナーシップはより高いステータスをもたらすと考える人はいる。

 カップルの一員であることがアイデンティティで、自分は選ばれたという感覚を抱いている人は、交際が終わる前に感情的な距離を置き始めることが多い。別れの後に回復する時間をとらず、すぐ次の恋愛に移って古い荷物をすべて新しい恋愛に持ち込む。気持ちの整理、精神的な休息や回復、感情の冬眠を避けるのだ。辛すぎるからだ。

 新しい関係に足を踏み入れることは容易で、多くの場合、次のパートナーシップでも同じ過ちを繰り返す。残念なことに、健全な学びと成長を犠牲にするこのタイプはシリアルキラーに似て次々に恋愛に手を出す。隣の芝生は青いのだ。自分が幸せでないのは今のパートナーのせい、他の誰かと一緒にいる方が幸せだと考える。パートナーというものは、幸福感が増さなかったり、恋が冷めてしまったら、取り替えなければならないのだろうか?

女性に影響を与える性欲の喪失
「エロティック・サイレンス」とは

「自分のニーズは、どうなの?」タイプ

 自分のニーズ、つまりコミュニケーションやセックス、感情的な親密さが満たされていないと感じるケースだ。

 米国の著名な社会学者ペッパー・シュワルツとジェームズ・ウィッテらが10万人を対象にした研究によると、欲求が満たされていないと感じることは浮気の温床となる。例えば、性生活に満足していない人の52%が「浮気の誘惑に駆られる」と答えたのに対し、満足している人はわずか17%だった。

 心理療法士で作家のダルマ・ハインは、パートナーシップにおいて多くの女性に影響を与える性欲の喪失を「エロティック・サイレンス」という言葉で表現している。

 育児や家事に対する責任が重くなればなるほど自分の欲求に着目したり、活力を感じたり、自発的に性欲を表現することが難しくなる。セックスを楽しむためにはある程度の自己陶酔が必要だ。