税金が他の支出よりも耐え難いのは、そこに選択の余地がないからだ。寄付をするときや食料を買うときは、いつどんなものにお金を使うのかを自分で決めることができるが、税については自由がない。支払いたいかどうか聞いてくれる人もいないし、払ったお金がどこに行くのかも定かではない。

 人々が主体性を取り戻せたら、税金が支払われる率も上がるだろうか?それを検証するために、3人の研究者が実験を行った。彼らはハーバード大学の研究室に学生たちを招き、様々なインテリアの写真を評価してもらった。

 報酬として10ドルがもらえることになっていたが、学生は「研究税」としてそのうち3ドルを支払うよう要求される。3ドルは封筒に入れ、退出前に研究者へ手渡さなくてはならない。学生たちにとっては残念な提案である。これを順守したのは半数にすぎず、残りの学生は封筒に何も入れないか、要求よりも低い額を入れた。

 この実験では、もう1つのグループが用意されていた。そちらの学生たちには、支払った研究税の使い道を主任研究員に提案できると伝えた(たとえば将来の研究参加者に飲み物や軽食を提供するなど)。すると驚いたことに、単に意思表示の機会を与えただけで、順守率が約50%から70%に上昇したのだ!これは劇的な変化である。この上昇率を国税に当てはめたとしたら、あなたの国ではどれだけの意味をもつだろう?

他人に行動を強制するには
「納得感」を与えることが効果的

 この結果がハーバード大学のエリート学生限定ではないことを確認するため、より大人数で多様性に富むアメリカ人のサンプルを対象にオンライン調査が行われた。

 今回の参加者の一部には、連邦税の使われ方に関する最新情報を読む機会が与えられる。さらにそのなかの一群には、自分の払った税金をどのように使ってほしいか(教育には何%、社会保障や医療には何%といった具合に)意見を求めた。最後には参加者全員に、もしも怪しげな税制の抜け穴があったとして、それを使えば税金が1割減るとしたら、抜け穴を利用するかどうかを質問した。