頭を抱える難問ですが、俯瞰してとっかかりを見つけましょう。注文の仕方によっては料理の名称を特定できそうです。
 たとえば、2人がAという料理を頼み、他の3人がBという料理を頼んだとします。
 すると出てきた料理のうち、2つある料理がA、3つある料理がBだとそれぞれ特定できます。

 しかしこれでは、合計3回の来店で特定できるのは6品まで。特定しなければいけない料理は全部で9品。
 不可能そうに見えますが、すべての料理を3回の来店で特定する方法があります。

「個数」によって特定できるとき

 この問題の目的は、メニューに書かれている料理名と、実際に出てくる料理を対応させることです。
 メニューに書かれている9つの料理名をそれぞれ「A,B,C,D,E,F,G,H,I」とするなら、「Aはステーキ」「Cはスープ」といった感じに特定できれば完了です。

 たとえば、5人の1回目の注文が「A,A,A,B,C」だとしましょう。
 このとき、3つ出てきた料理が「A」だと判明します。
 しかし「B」と「C」に関しては、これだけではどちらの料理が「B」「C」なのかはわかりません。

 他にも、たとえば「A,A,B,B,C」と注文した場合、1つだけ出てきた料理は「C」だと判明します。
 しかしこの場合も、「A」と「B」については、どちらも2つずつ出てくるため、どちらの料理が「A」「B」なのかはわかりません。

「重複」によっても特定できる

 では、「個数」以外に特定する方法はないのでしょうか。
 ここで、「3回注文できる」という条件が生きてきます。
 今回の注文で特定できなくても、次回来店時の注文によって特定できればいいのです。
 そのためには、

「重複している注文」をつくるのです。

 たとえば、1回目の注文が「A,A,A,B,C」で、2回目の注文が「B,D,D,D,E」だった場合、以下が判明します。

 A→1回目の注文で3つ出てきた料理
 B→1回目と2回目、両方の注文で出てきた料理
 C→1回目の注文だけに1つだけ出てきた料理
 D→2回目の注文で3つ出てきた料理
 E→2回目の注文だけに1つだけ出てきた料理

 1回目と2回目で特定の注文を重複させることで、「1回目だけ出てきた」「2回目でも出てきた」という形で特定できます。
 こうすることで、2回の注文で5つの料理を特定できました。

「メモ」が鍵になる

 これで、特定できていないのは「F,G,H,I」の4つになりました。
 しかし、残された注文のチャンスはあと1回のみ。
 一度の注文で4つの料理を特定する方法はありません。
 1回目、2回目の注文で5つの料理を特定できたのは、「重複」があったからです。

 そのため3回目の注文も、他の回の注文と「重複」させる必要があります。
 2回目の注文と3回目の注文で、いくつかの料理を重複させます。
 そして、ここで忘れてはいけないのが、「過去に注文した内容と、出てきた料理はメモできる」という文章。
 つまり、もし3回目の注文のなかに1回目の注文と重複していた料理があった場合、それに気づくことができます。
 1回目と2回目、2回目と3回目、3回目と1回目と、すべての回で「重複」をつくることで、それによっても特定ができます。

3回の注文で「9品」を特定する方法

 ここまでくれば、解決のための材料はそろいました。
 情報を整理しましょう。
 料理を特定できる方法は、以下ということがわかりました。

 ・「複数」出てきた料理
 ・「1つだけ」出てきた料理
 ・「重複」していた料理

 では、1回目の注文から考えてみましょう。
 上記の方法を盛り込むと、このような注文になります。

 1回目:A、B、B、C、D

「B」は、「複数出てくる」ことで特定させる料理です。
 残りの「A,C,D」のうち、たとえば「D」を2回目の注文と、「A」を3回目の注文と重複させることで、それぞれ特定できます。
 そして、どの回とも重複しなかった「C」も、おのずと特定できます。

 この考え方で各回の注文方法を考えると、以下のようになります。

 1回目:A、B、B、C、D
 2回目:D、E、E、F、G
 3回目:G、H、H、I、A

 これですべての料理が特定できているか、確認してみましょう。
 まず、各回で「複数」出てくることでわかるのが、

 B→1回目の注文で2つ出てきた料理
 E→2回目の注文で2つ出てきた料理
 H→3回目の注文で2つ出てきた料理

 そして、「重複」によってわかるのが、

 A→1回目と3回目の注文で重複して出てきた料理
 D→1回目と2回目の注文で重複して出てきた料理
 G→2回目と3回目の注文で重複して出てきた料理

 最後に、「1つだけ」出てくることでわかるのが、

 C→1回目の注文だけに1つだけ出てきた料理
 F→2回目の注文だけに1つだけ出てきた料理
 I→3回目の注文だけに1つだけ出てきた料理

これで、3回の注文で9つの料理をすべて特定できました。

<正解>

 9つの料理をそれぞれABCDEFGHIとしたとき、以下のように注文すると、すべての料理の名称を特定できる。
 1回目:A、B、B、C、D
 2回目:D、E、E、F、G
 3回目:G、H、H、I、A

「思考」のまとめ

 いちばんのポイントは「他の回の注文と重複させて特定する」という視点を持てるかどうかでした。
 とくに、「1回目と3回目の注文で重複させる」という方法は、広い視野で状況をとらえることではじめて見えてくるポイントです。

「1回ずつ完璧に特定しよう」と短期的な視点でのみ考えてしまうと、正解には辿り着けなかったでしょう。
 1回目、2回目、3回目の注文と、時間をまたいで全体像を俯瞰することで気づける解決策でした。
 時間を超えた俯瞰思考が鍛えられる問題でしたね。

 ・いまわからなくても、「のちにわかればいい」という視点を持つ
 ・過去や未来も含めて、全体を俯瞰して考えていくことが大事

(本稿は、『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から一部抜粋した内容です。)

野村裕之(のむら・ひろゆき)
都内上場企業のWebマーケター。論理的思考問題を紹介する国内有数のブログ「明日は未来だ!」運営者
ブログの最高月間PVは70万超。解説のわかりやすさに定評があり、多くの企業、教育機関、テレビ局などから「ブログの内容を使わせてほしい」と連絡を受ける。29歳までフリーター生活をしていたが、同ブログがきっかけとなり広告代理店に入社。論理的思考問題で培った思考力を駆使してWebマーケティングを展開し、1日のWeb広告収入として当時は前例のなかった粗利1500万円を達成するなど活躍。3年間で個人利益1億円を上げた後、フリーランスとなり、企業のデジタル集客、市場分析、ターゲット設定、広告の制作や運用、セミナー主催など、マーケティング全般を支援する。2023年に現在の会社に入社。Webマーケティングに加えて新規事業開発にも携わりながら、成果を出している。本書が初の著書となる。