「『やる気がなさそうに見える』と言われた私が、会社を変える存在に」
福田素子さんは不安と闘っていた。職場の人間関係に悩んでいた。自分では仕事にやりがいを持って取り組んでいるつもりなのに、上司に「やる気がなさそうに見える」と言われてショックを受けた。
しかし、思い当たる節がないでもない。そのとき配属されていた部署は「物流」。新入社員研修の段階で、唯一、興味の持てなかった部署に配属されてしまった。その気持ちが、どこかに滲み出ていたのかもしれない。
もしかしたら、就活の段階で間違いを犯していたのだろうか? 今の仕事は自分に向いていないのかもしれない。会社を辞めた方がいいのではないだろうか? モヤモヤした気持ちを抱えてふらりと本屋を訪れた。「不安と闘うあなたへ」と書かれた帯が目に入った。私のことかな。その本のタイトルは『苦しかったときの話をしようか』だった。手に取り、パラパラとページを捲って少し読んでみた。続きが気になって購入することにした。
本に書いてあった「自分の強みを見つける自己診断テスト」をやってみた。自分の好きな動詞をひたすら書き出してみる。やはり自分は「考える」ことが好きなのだと実感した。今の部署は「コミュニケーション」が好きな人が活躍しているような気がする。自分の強みである「考えること」を活かせる部署は他にある気がした。
だけどその会社は、自分の意志で異動ができるような雰囲気ではなかった。少なくともそんな話は聞いたことがなかった。しかし本には「ナスビには、ナスビに適した土壌がある」と書いてある。その言葉に背中を押された。思い切って、人事部に異動願いを出した。最初は相手にされなかったが、何度も何度も、私の特徴を活かせるのはこの部署です、と食い下がった。やがて希望は受け入れられ、異動が決まった。
新しい部署の仕事は始まったばかり。不安だらけだけれど、「不安は君が挑戦している証拠だ」と本に書いてあった。目的を持って働くことで仕事は楽しくなる。仕事が楽しくなれば、人生そのものも楽しくなるはずだ。本との出会いで生き方が変わった。
今、とても生き生きと仕事ができている。業務のどこに問題があるのかを考えて、改革案を提案する。今の部署にはそんな姿勢が求められる。
最初の大きな仕事は、業務のデジタル化の推進だった。勤務する会社では「紙出し」と言ってプリントアウトしなければ業務が進まない仕組みになっていた。コロナ禍に襲われても、出社しなければ仕事が進まないのだ。これではあまりに非効率だ。リモートでも仕事ができるシステムに改善できないかと上司に提案した。すると「やってみよう」と受け入れてもらえた。
私の提案がきっかけになって、社内の業務は大きく変わった。以前の自分を知る同僚からは「自分の意見が言えるようになって変わったね」と言われた。もう誰にも「やる気がなさそう」なんて言わせない。