前項の公認会計士の男性はその点に気づき、声という欠点を克服しようと決めた時点で、すでにライバルより「半歩」分、前に進めていたともいえます。

 転職や就職活動の「面接」も、まさにこの「大勢のなかから抜きん出る力」が求められる場面です。

 人材採用の際、面接をしない会社はありません。しかし、面接や書類上の経歴で、現場での能力まで測るのは難しい。採用の可否には「印象」が大きく左右します。

 事実、28社連続で面接落ちしていた新卒の男性は、レッスンを受けると一発で広告代理店の採用を獲得。のちに面接官をしていた上司から「誰より声が明るくてよかった。これは元気な子だろうなと思って、君に決めたんだよ」といわれたそうです。

 発電所エンジニアの30代の女性は、転職に悩んでいました。ひとつ目に受けた企業で不採用になり、家族や友人に「なぜ落とされたんだろう?」と聞いてみたところ、「声が暗い」といわれたそうです。

 実は、それまで勤めていた会社はいわゆるブラック企業で、仕事で追い詰められた末、彼女はうつを患ってしまいました。自信を失い、前向きになれず、「自分のことが嫌い」とまでいっていました。自信がない人に多いのですが、彼女も呼吸が浅く短く、抑揚のない声になっていました。

 レッスンでは、単語の頭でしっかり息を吐く発声法を練習し、話すときの「笑顔」も指導しました。もともと頭がいい人なのでしょう。数時間のトレーニングで明るくはっきり話せるようになり、翌週に面接を受けた企業は見事採用。かつての勤め先より数段有名な一流企業です。「給料もかなり上がった」とうれしそうに話していました。そのころには心身ともに自信がよみがえり、なんと、うつも克服できたとの報告を受けました。

 声というのは、「自信」とも密接に関係しているのですね。

聞きやすい声になったことで
生徒が居眠りしなくなった先生

 自信に満ちた声に惹きつけられるのは、どのような立場や関係でもいえること。予備校の人気講師はいい声の持ち主ばかり。声が「収入」に結びついている好例ですね。