もちろん、芸人さんたちのように「いま、噛んだ?」などとはやし立てるようなことはしませんが、重要なプレゼンや交渉をしている最中に何度も噛んでいると、聞いている相手は「この人、大丈夫かな?」という不安感を抱いてしまう。

 言葉は少し悪いのですが、「ナメられる」といってもいいかもしれません。当然、聞き取りにくさから要件が伝わりにくいという難点もあります。

 芸人さんならば、噛んだことを「笑い」という成果につなげることもできますが、ビジネスパーソンにとっては、何ひとつメリットはありません。

 あるとき、某ITの上場企業の秘書の方から依頼を受けました。

「弊社の社長の話し方をなんとかしてほしい」

 くわしく聞くと、その企業の社長はとにかく早口で、滑舌も悪いので話が聞き取りにくい。このような話し方では、企業のトップとしての威厳が保てない。株主総会でも株主たちに不安感を与えかねないので、もっと安心感や信頼感を抱かせる話し方ができるようにならないだろうか。そういった内容の相談でした。

いい声や話し方を会得するには
意識することが何より大事

 若くして成功した非常に優秀な社長で、テレビなどへのメディア出演も多い。しかし、そのたびに噛みながら早口でまくし立てるので、「テレビに出れば出るほど印象が悪くなってしまう」と、本人より周囲の社員が心配していたのです。

 頭のいい人には、早口な人がとても多い。頭の回転がものすごく速いので、思考は次々あふれてくるのに言葉が追いついてこない。結果、聞き取りにくく、焦っているような話し方になってしまう。早口で噛みまくりだと、聞くほうも落ち着かないですよね。

 声の通りはよく、決して悪い声ではなかった。そこで、滑舌をよくすることをメインに、呼吸のコントロールを心がけて早口にならないようにするトレーニングをしました。

 しばらくして、テレビ出演されているのを見たところ、早口はかなり改善されており、トレーニングしたことをしっかり意識して話しているのがわかりました。

 いい声や話し方をマスターするためには、意識することが何より大事!