自分の話を聞いてもらうことがビジネスに直結している人にとって、声は最大の武器になりますが、逆に最大の弱点となる場合も。

 ある大学の先生も、「授業中に生徒が寝てしまう」と、私のところに相談にやってきました。話してみると、癒やし系のとても魅力的な声をしています。しかし、授業でもそのままの声では、「集中して聞いてもらう」ためには向いていないと感じました。間の取り方も悪く、抑揚もないため、聞いていると眠気を感じてしまうのも無理はありません。

 そこで、単語をひとつずつはっきり発音するトレーニングに加え、声のボリュームを変えたり、身振り手振りを使って訴えかけるように話したりする練習をしてもらいました。

 たくさんのことをマスターしなければならなかったので大変だったと思いますが、成果はすぐに表れました。授業中に寝てしまう生徒がいなくなったのです。講師への評価を測るアンケートでも、「以前より格段に聞き取りやすい」「話に惹き込まれて授業がおもしろくなった」という声が多かったそうです。

 企業の管理職も、「聞いてもらう」スキルによって自分自身への評価が変わります。当然、収入にも影響するでしょう。

 私のスクールにきた某大手企業に勤務する40代の商社マン。彼も管理職に昇進した際、上司から「お前の声は聞き取りにくいし軽い印象があるから、なんとかしたほうがいいぞ」と注意されたのだとか。

 肝心なところでモゴモゴと不明瞭になる癖があり、声の音程も高い。上司の指摘どおり、これでは数十人の部下の前で大切な話をしたり、威厳を持って指導をしたりするのは難しい。ただ、管理職になっていることからも、仕事ができるのはたしか。あとは呼吸、発声、滑舌のトレーニングをして声を変えるだけです。

 半年後、「話を聞く部下の表情が変わった」「上司からの評価も上がったように感じる」とのメールをもらいました。こうした喜びの声が、私自身のいちばんの喜びにもなっています。

呼吸のコントロールを会得して
株主総会で噛まなくなったIT社長

 お笑い芸人さんのやり取りを見ていると、少し言葉を噛んだだけでツッコまれる場面がたびたびありますね。実は、ビジネスにおいても同じような状況があります。