回答のポイント:最初から推定対象に直接アプローチせず、周辺から攻めていく
ショベルカーが主に利用されている工事現場を明確にし、年間の工事件数を推定することで、日本にあるショベルカーの台数を求めよう。
以下が解答例です。
どこで、どのように使われるのかの認識を合わせる
今回、国内における1年間のショベルカーの販売額を市場規模として推定します。
ショベルカーの用途として、地面を掘ることや整地すること、建物などを解体することがあります。
ただ、道路工事では、人の手でアスファルトを破壊してタンクローリーで整地している現場もよく見かけることから、すべての現場でショベルカーが必要とは考えにくいです。
したがって、今回は単純化のため、建設現場で用いられるショベルカーに焦点を絞って市場規模を推定します。
建設工事件数を定量的に捉え、ショベルカーの需要規模を押さえる
まず建設現場について、日本の国土は約40万㎢、そのうち都市部の面積は約半分とされているので、日本の都市部の面積を20万㎢とします。
また、空地や道路、田畑など建物以外の場所が都市部にもあることから、都市部に占める建物の面積は全体の半分と仮定して10万㎢とします。
これらの建物が建つ用途地域の大半は長期間にわたって建物が建設されてきたと仮定すると、建物の建て替え年数を40年としたときに、新規に建設が行われる土地は平均で
10万㎢÷40年=2500㎢/年
となります。
また、現時点で取り壊す建物については、再開発が頻繁に行われる前の木造の住宅やアパートが多いことから、建物1棟あたりの面積は
200㎡=0.0002㎢
(1㎢=1000m×1000m=1,000,000㎡)
程度と仮定します。すると、年間に建て直しのための取り壊す物件数は
2500㎢/年÷0.0002㎢/件
=12,500,000件/年
年間1250万件と求められます。
次にショベルカーが1年間に処理できる物件数を求めます。
1件の取り壊しに1週間ほどショベルカーを使用し、ショベルカーは50%の稼働率で活用していると仮定すると、1年間(52週間)でショベルカー1台あたり26件(52×0.5で計算)の物件を処理できると計算できます。
以上より、日本にストックされているショベルカーの台数は
1250万件÷26件/台≒50万台
と求められます。
また、いただいた情報から、ショベルカーの単価を500万円、耐用年数を10年と仮定すると
50万台×500万円/台÷10年=2500億円/年
と国内市場規模を推定できました。
以上となります。ありがとうございました。
面接官からの質問
──今回はショベルカーの使われる場面を起点に推定されていましたが、そのアプローチを選択した背景を教えていただけますか?
ショベルカーの主な利用主体は個人ではなく企業であるため、ショベルカーを使用する企業数や、1社あたりのショベルカーの所有台数などを推定することが困難だと感じました。
そこで、国土面積など、私の知っている数値を活用してショベルカーが使われる場面(工事件数)を概算することで、より合理的にショベルカーの市場規模を推定できると考えました。
──推定していただいた国内市場規模は、10年後にどのように変化すると思いますか?
10年後の国内市場規模は横ばいと考えます。今回、市場規模は「年間の販売台数×ショベルカーの単価」で計算しました。
販売台数は、日本の人口減少や都市のコンパクト化に伴う物件数の縮小から減少すると思います。
一方、単価は近年の人件費や材料費の高騰に伴い上昇すると思います。
縮小要因と拡大要因のどちらが勝るかを現時点で判断することは難しいですが、これらの要因が打ち消し合い市場規模は横ばいに近いままになると推測します。
──今回の推計の精度を高めるために何か1つ調査ができるとしたら、どのようなことを行いますか?
実際の建築・開発の件数に関する統計値を調査したいです。今回は国土面積をもとに建物の工事件数を概算しましたが、住宅着工統計などの建設に関する統計を用いることができれば精度を高められると考えています。
(本稿は『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』から一部を抜粋・編集したものです)