販売価格への転嫁が
難しく約半数が赤字
量産豆腐に多く使用される米国産など輸入大豆の価格は足元で落ち着いてきたものの、電気・ガス代や物流費、プラスチック製が多い容器代などのコストも上昇している。
他方で、豆腐は他の生鮮食品とともに日持ちせず、「特売品」の目玉として小売業者からの値下げ圧力は常に高い状態を強いられている。加えて、主要な販売先のスーパーで近年急速に台頭してきた安価なPB製品や、大手メーカーによる安価な大量生産品との価格競争も厳しくなっている。
実際に、豆腐1丁あたりの大豆原価率を試算すると、足元でコロナ前を上回る10%台で推移するなど高い水準が続いている。しかしながら、こうしたコスト上昇分を販売価格へ転嫁できるケースは少なく、豆腐店の損益は約半数が「赤字」となっている。薄利多売による経営環境の悪化に、後継者難といった経営内部の課題も重なったことが、豆腐店の倒産・廃業が急増した要因とみられる。
安値で栄養価も高く、日本の食卓を長年支えてきた「物価の優等生」の看板を前に、豆腐の適正価格への理解が進まなければ、豆腐店の倒産や廃業がこれから年末にかけてもさらに増加する可能性がある。