法的措置が生む
「誹謗中傷モンスター」
アスリートへの誹謗中傷が世界的に問題となっている。
国際オリンピック委員会(IOC)選手委員会によれば、パリ五輪の期間中に選手やその関係者に対するインターネットでの誹謗中傷は8500件超あったという。
プロスポーツの世界でも深刻だ。8月25日、ドジャース・大谷翔平選手に死球を与えてしまったレイズの投手は、熱狂的な大谷ファンからの誹謗中傷を受け、Xのアカウントを削除。さらに、妻や子どもへの殺害予告や、SNSアカウントのハッキング被害などがあったことを明かしている。
こうした状況を改善するべく、さまざまな形で誹謗中傷対策が進められている。有名なところでは、「AI監視システム」が挙げられる。投稿をする前に、誹謗中傷になりそうな言葉を検知して、投稿を思いとどまらせるようにするのだ。最近はこれに加えて、弁護士やカウンセラーへの相談をパッケージとした「アスリート誹謗中傷被害対策サービス」を提供する企業もあらわれた。
一方、“攻めの対策”として「法的措置」に踏み切るアスリートも増えている。22年7月に侮辱罪が厳罰化されたことに加えて、発信者情報開示請求の手続きが大幅に簡略化された影響が大きい。例えば、横浜DeNAベイスターズの関根大気選手は今年4月の試合で「死ねよ」「関根きもいわ」など8件の投稿に対して発信者情報開示命令を申し立て、それが認められたと8月15日に報告している。
また、パラアーチェリーの小野寺朝子選手のブログに、執拗に誹謗中傷を繰り返した相手に対して開示請求をおこなったところ、なんと「格上」のパラアーチェリー日本代表選手だった、ということも大きな話題になった。
ただ、残念ながらこのような誹謗中傷対策だけでは「焼け石に水」だろう。誹謗中傷をする熱狂的なファンというのは基本的に、自分は誹謗中傷をしているなどという自覚がないからだ。