回答のポイントは、キャンプ関連市場を事業単位で分解し、個別に推定することです。キャンプに関連する事業を整理し、個々の市場規模を推定して合算しましょう。

 以下が解答例です。

キャンプ関連市場について、推定の範囲を明確にする

 まず前提として、推定の対象とする「キャンプ関連市場」について定義します。

 キャンプに関連する事業は、キャンプ場を運営し利用料を得る施設運営ビジネスと、キャンプで用いる専用の道具を製造・販売するキャンプ用品ビジネスの大きく2つに分けられます。

 今回はこの2つの国内における市場規模をそれぞれ推定します。

 なお、「キャンプ場」というと、山林の中でテントを張って行う一般的なキャンプ場だけでなく、グランピングなども該当すると思います。

 今回の検討では、国内における前者の一般的なキャンプのみを対象とします。

キャンプに関連する事業の市場規模
 

①キャンプ施設運営の市場規模②キャンプ用品の市場規模

 

※①にグランピングなどは含まないものとする

各々の市場規模について、納得感のある推定方法を検討する

 次に、各市場規模の推定方法について、実際に自分や周囲の人がキャンプに行った経験などをもとに検討します。

 ①キャンプ施設運営の市場規模については、

 国内全てのキャンプ場の年間利用客数×平均単価

 で算出できます。年間利用客数を求めるにあたっては、キャンプ場の数とキャパシティ(キャンプ場の最大収容人数)を用いたアプローチで、推定します。

①キャンプ施設運営の市場規模
 

=国内キャンプ場の年間利用客数×平均単価
 

=国内キャンプ場の数×キャンプ場の平均的なキャパシティ×稼働率×営業日数×平均単価

 キャンプ場の数を求めるにあたっては、日本全体の国土面積を起点に算出します。

 一般的にキャンプ場といえば山林地域に多くあるイメージですが、それ以外の地域においても大型公園などにキャンプ施設が併設されているケースもあります。

 このように、山林地域とそれ以外ではキャンプ場の数や、存在している密度が異なると考えたため、以下のように場合分けして検討します。

国内キャンプ場の数
 

=[日本の山林地域面積×山林地域におけるキャンプ場の密度]+[日本の山林地域以外にある大型公園などの数×キャンプ場が併設されている割合]

 次に、②キャンプ用品の市場規模ですが、

 国内のキャンプを楽しんでいる人口×1人あたりの平均購入金額

 で求められると思います。

 また、キャンプを楽しんでいる人口については、国内キャンプ場の年間利用客数を1年あたりの平均来場回数で割ることで推定します。

 キャンプへの関心が強いコアユーザーと周囲に誘われて来場するようなライトユーザーでは、1人あたりのキャンプ用品購入額やキャンプ場への平均来場回数が異なることも考慮して検討します。

②キャンプ用品の市場規模
 

=国内のキャンプを楽しんでいる人口×1人あたりの平均購入金額
 

=国内全てのキャンプ場の年間利用客数÷1年あたりの平均来場回数×1人あたりの平均購入金額

推定に必要な各変数を概算する

 ひと通りの推定方法が定まりましたので、推定に必要な各変数の値を概算していきます。

 ①キャンプ施設運営の市場規模については、初めに、国内におけるキャンプ場の数を考えます。

 山林地域のキャンプ場数の算出にあたっては日本の国土面積は約40万㎢、今回はその約2/3である25万㎢が山林地域とします。

 また、山林地域でキャンプ場の存在する密度を考えてみると、自分が実際にキャンプ場を訪れた経験から、10㎞四方に1つ程度の割合でキャンプ場が立地していると考えます。

 次に、山林地域以外のキャンプ場数については、都道府県ごとに、キャンプ場が併設可能な規模の大型公園や原っぱ、レジャー施設などが平均して20ヵ所存在していると仮定します。

 また、その中でも30%程度がキャンプ場を併設していると考え、以下のように算出しました。

国内のキャンプ場の数
 

=日本の山林地域面積(25万㎢)×キャンプ場の密度(1/100㎢)+大型公園などの数(20ヵ所)×47都道府県×キャンプ場が併設されている割合(30%)
 

≒ 2,500+300

 

=2,800ヵ所

 次に、施設運営の市場算出に必要な各変数ですが、以下のように設定します。

キャンプ場の平均的なキャパシティ=30組

 

稼働率=30%

 

営業日数=200日
( ※冬期3ヵ月程度は休業、月20日程度の営業)

 

平均単価=1組の平均人数(3名)×1人あたり単価(1,000円)=3,000円

 キャンプ場のキャパシティについては、自分がキャンプ場を訪れた経験から大型のものは100組以上、小型だと5~10組程度、平均すると30組程度が妥当だと考えます。

 1組あたりの平均単価に関しては、1組の平均人数をソロやファミリーなどのグループでの利用シーンを鑑みて3名程度、1人あたり単価を1,000円と仮定します。

 このような想定のもと、①キャンプ施設運営の市場規模は150億円と推定します。

①キャンプ施設運営の市場規模
 

国内キャンプ場の数(2,800ヵ所)×キャンプ場の平均的なキャパシティ(30組)×稼働率(30%)×営業日数(200日)×平均単価(3,000円)
 

国内キャンプ場の年間利用客数(約500万人) ×平均単価(3,000円)
 

=150億円

 次に②キャンプ用品の市場規模については、以下のように変数を設定します。

1年あたりの平均来場回数=2回
平均単価=約2万5,000円

 1年あたりの平均来場数は、コアなキャンプファンが何度もリピートしている一方で、誘われたら年に1回程度行くライトユーザーも多いと想定し、2回とします。

 また、平均単価に関しては、キャンプ用品は高価なものも多いため、2万5,000円と仮定します。

 このような想定のもと、キャンプ用品の市場規模は625億円と推定します。

②キャンプ用品の市場規模
 

国内全てのキャンプ場における年間利用客数(約500万人)÷1年あたりの平均来場回数(2回) ×平均単価(約2万5,000円)

=625億円

 以上の結果から、国内のキャンプに関連する市場規模は775億円と推定します。

国内キャンプ関連事業の市場規模
 

①キャンプ施設運営の市場規模(150億円)②キャンプ用品の市場規模(625億円)
 

=775億円

 以上となります。ありがとうございます。

面接官からの質問

――キャンプ場の稼働率やキャンプ用品の平均単価について、数値設定の根拠を教えてください。

 キャンプ場の稼働率については、閑散期と繁忙期に分けたうえで、営業日は雪の降る3ヵ月間は閉業、週休2日を前提としました。

稼働率
=(閑散期10%×5ヵ月+繁忙期50%×4ヵ月)÷9ヵ月
≒ 30%

 また、キャンプ用品の平均単価は、高価な商品を購入するコアユーザーを2割、安価で最低限のものを購入するライトユーザーを8割として、以下のように算出しました。

平均単価
=コアユーザー(10万円×全体の20%)+ライトユーザー(6,000円×全体の80%)
≒ 2万5,000円

――今回の推定方法以外だと、どのようなアプローチが有効でしょうか?

 人口起点で推定する方法でも市場規模を推定できると思います。

 具体的には、人口をキャンプに対する関心度合いで分類し、セグメントごとにキャンプを楽しむ人口を算出します。

 しかし私は、キャンプに対する関心度合いについての具体的な感覚値が全くなく、こちらの方法ではかなりあやふやな推定になると感じました。

――今回、検討範囲から外したグランピングについては、どのように市場規模を推定すればよいと考えていますか?

 グランピング施設運営の市場規模については、基本的な考え方はキャンプ場と変わらず、「国内グランピング施設全体のキャパシティ×稼働率×平均単価」で推定できます。キャンプ場と比較して、単価が高い点には注意が必要だと思います。

(本稿は『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』から一部を抜粋・編集したものです)