絶好調の業務スーパーとヤオコー「まったく違う」儲けのカラクリとは?Photo:SANKEI

食品の値上げに関するニュースが相次いでいるため、スーパーマーケットの経営は苦しいのではないか……と思う人もいるかもしれないが、実は業績好調な企業も少なくない。「業務スーパー」で知られる神戸物産と、関東地方で食品スーパーを運営するヤオコーは、23年度の売上高、営業利益がともに過去最高となった。実はこの2社、いずれも食品スーパーを手掛ける企業だが、ビジネスの構造が大きく異なる。どういうことなのか。決算書から読み解いてみよう。(中京大学国際学部・同大学院人文社会科学研究科教授 矢部謙介)

物価高で節約志向強まる中
好業績の神戸物産とヤオコー

 コロナ禍の巣ごもり特需で業績好調だった食品スーパー業界だが、その後の反動減を経て再び業績が回復してきた。人件費や電気代などの光熱費や商品の原価が高騰している一方で、商品販売価格の値上げの影響もあって客単価が増加していることも好業績に寄与しているといわれる。消費者の節約志向が強まっている中での値上げには、買い控えを招くリスクがあるものの、2023年度の決算においてはプラスに働いた格好だ。

 今回は、そうした食品スーパー業界から、23年度決算で最高益を更新した大手の神戸物産とヤオコーの決算書を取り上げる。

 神戸物産(兵庫県加古川市)は、業務用食品などの販売を手掛ける「業務スーパー」を主力業態として展開している。神戸物産の23年10月期連結決算では、売上高が約4620億円、営業利益が約310億円で前期比増収増益となり、それぞれ過去最高を記録した。

 ヤオコーは、埼玉県川越市に本社を置き、関東地方で食品スーパー「ヤオコーマーケットプレイス」を展開している。ヤオコーの24年3月期連結決算は、売上高(営業収入を含む)が約6200億円、営業利益が約290億円で、こちらも前期比で増収増益だ。それだけでなく、ヤオコー単体としては35期連続での増収増益となり、売上高、営業利益ともに過去最高を更新している。

 主に食品スーパー事業を手掛ける両社だが、実はそのビジネスモデルは大きく異なる。今回は、それぞれの決算書から両社のビジネスモデルの違いについて読み解いていくことにしよう。