そう考えると、私が接してきたリーダーはみな、この猛烈な好奇心を必ず持っていました。オラクルのラリーは企業買収を繰り返し、グループを広げていきました。それは猛烈な好奇心に突き動かされて、さまざまな領域に関心を持ったからでしょう。彼にいたっては、好奇心は仕事にとどまらず、趣味のヨットには世界大会のレースに出場するほど本格的にのめり込みました。

 私が出会った日本人の中では、ソフトバンクの孫正義さんとファーストリテイリングの柳井正さん、この二人が飛び抜けて猛烈な好奇心の持ち主です。

 孫さんはあれだけ事業を拡大し、巨大なグループをつくり上げているのに、自分の知らないことはまだ謙虚に学ぼうと、私のところにわざわざ「BtoBビジネスの極意を教えてほしい」と頭まで下げて来てくれました。

 また、アップル時代に、ソフトバンクと共同で携帯電話とiPod をセットで販売するというプロジェクトを走らせたことがありましたが、準備会議の席で、孫さんは一時間の間に少なくとも100個以上の質問と変革のアイデアを私に投げかけてきました。

 エレクトロニクス周辺にいるだけではとても出てこないようなアイデアが、コンテンツ、パッケージ、値づけ、値引き、販売手法、マーケティングなど全領域にわたってポンポンと機関銃のように出てきます。

 尋常ではないスピードで、まるで紙に書いたものを読んでいるかのようで非常に驚いたのを覚えています。すべて興味深い内容ばかりで、いかに孫さんが多方面のことに興味を持っているかがわかりました。そうした場面では、いつも「あ、スティーブと同じニオイ(=猛烈な好奇心)がする」と思ったものです。

 柳井さんとはゴルフをする仲ですが、アップルに入社してご挨拶に伺ったとき、孫さんと同じように次々とアイデアが飛び出してくるスピードに驚きました。Mac やiPod の景品がTシャツじゃつまらないよね、という話から、ユニクロのTシャツの景品にMac がもらえるとか、iPod を入れるポケットがついたTシャツを作ろうといった、逆転の発想のアイデアがポンポンと出てきます。