企業を継続的に成長させる
7つのステップ【図解】

 図1・8は「サービスプロフィットチェーン(Service Profit Chain:SPC)」というフレームワークです。従業員満足(Employee Satisfaction:ES)と顧客満足(Customer Satisfaction:CS)と企業の利益の関係性を示したもので、ハーバード・ビジネススクールのジェームズ・L・へスケット教授と、W・アール・サッサー教授らが1994年に提唱しました。著書『バリュー・プロフィット・チェーン――顧客・従業員満足を「利益」と連鎖させる』(山本昭二・小野譲司訳、日本経済新聞出版、2004年)で詳しく解説されています。

図1.8 サービスプロフィットチェーン同書より転載 拡大画像表示

 SPCは、企業の活動を7つの段階に分けてとらえ、それぞれが次の段階に作用することで好循環を生み出し、継続的な成長につながることを示しています。

(1)社内のサービス品質向上により、従業員満足(ES)が高まる
(2)ES向上により従業員の貢献意欲や定着度、生産性が高まる
(3)従業員の意欲や生産性の向上により顧客へのサービス品質が高まる
(4)サービス品質の向上により顧客満足度が上がる
(5)顧客満足の向上により顧客ロイヤルティが高まる
(6)顧客ロイヤルティの高まりが企業の成長、収益の向上につながる
(7)収益向上により従業員の報酬や福利厚生が改善され、自社内のサービス品質が高まる

 つまり、従業員満足を高めることが顧客満足の向上につながり、結果として収益の向上をもたらすということです。従業員満足が高まるような従業員体験を提供することができれば、それは企業の業績にもプラスになるのです。

 重要なのは、図1・8の左側があってこそ右側が継続的に高まることです。企業が収益拡大を短期的に考えると、SPCの右側に位置する、顧客満足やロイヤルティの向上ばかりに注力してしまいがちです。しかし継続的に業績を上げていくためには、その前段階となる従業員満足度の向上や生産性の向上を図らなければなりません。

「お客様第一」を掲げて優れたサービスを提供しているものの、従業員の身体的・精神的負荷が大きくて満足度が低く、離職率が高い、といった企業では持続的な成長は困難です。

 接客業・飲食業などのサービス業には「ブラック企業」が多いと言われることがありますが、会社がSPCの左側をおろそかにして右側ばかりを追求すると、そういう状態に陥ってしまいます。

 なお、SPCにおいて従業員満足と顧客満足をバランスよく向上させる鍵は、真ん中にある「顧客サービスの質」の基準となる「サービスコンセプト」をしっかりと定義することです。