Aさんが入社したときの平均賃金額は、(21×40+22×39+…+60×1)÷(40+39+…+1)=34万円でしたが、Aさんが定年退職する直前には、(21×1+22×2+…+60×40)÷(1+2+…+40)=47万円になっています。内転により人件費総額は一定であったはずが、年齢構成の高齢化によって人件費が相当に高くなってしまいました。

 現実の日本社会はこの40年間、団塊の世代が通り過ぎる中でおおむねそういう経路をたどってきたわけです。さらにいえば、1950年代の新卒者の過半数は中卒の15歳で、定年は55歳であったのが、現在は新卒者の過半数は大卒の20代前半で、60歳定年後も65歳まで継続雇用されるようになっていますので、グラフはぐっと右にシフトしており、人件費増はさらに大きいものがあるはずです。

定期昇給制度のみでも
人件費高騰への懸念

 実はこの問題は既に1960年代に日経連自身によって認識されていました。この時期の日経連の春闘向けパンフレットのうち、1966年1月の『不況下の春闘と賃金問題』ではなんと定期昇給制度の再検討を訴えているのですが、職務給推進と矛盾するからというわけではありません。