2023年6月16日に閣議決定された『新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版』では、「この問題の背景には、年功賃金制等の戦後に形成された雇用システムがある。職務(ジョブ)やこれに要求されるスキルの基準も不明瞭なため、評価・賃金の客観性と透明性が十分確保されておらず、個人がどう頑張ったら報われるかが分かりにくいため、エンゲージメントが低いことに加え、転職しにくく、転職したとしても給料アップにつながりにくかった。また、やる気があっても、スキルアップや学ぶ機会へのアクセスの公平性が十分確保されていない」と日本型雇用システムを批判し、具体的には「職務給の個々の企業の実態に合った導入」等による「構造的賃上げを通じ、同じ職務であるにもかかわらず、日本企業と外国企業の間に存在する賃金格差を、国ごとの経済事情の差を勘案しつつ、縮小することを目指す」と打ち上げているのです。

60年前に池田首相も求めた
同一労働同一賃金原則

 こうした職務給への強い指向は、同じ宏池会出身の大先輩である池田勇人元首相とよく似ています。いや、池田首相の発言や池田政権時代の政策文書の記述を読み返すと、60年を隔てて両者の政策はそっくりだとすら感じます。