2023年の岸田首相の施政方針演説のちょうど60年前の1963年1月23日、池田首相は第43回国会の施政方針演説で「従来の年功序列賃金にとらわれることなく、勤労者の職務、能力に応ずる賃金制度の活用をはかるとともに、技能訓練施設を整備し、労働の流動性を高めることが雇用問題の最大の課題であります」と語っていたのです。
当時の日本では数年おきに策定される経済計画が経済社会政策のマニフェストとして重要な意味を持っていました。
池田首相の下で1960年12月27日に閣議決定された『国民所得倍増計画』は、「年功序列制度がややもすると若くして能力のある者の不満意識を生むとともに、大過なく企業に勤めれば俸給も上昇していくことから創意に欠ける労働力を生み出す面があるが、技術革新時代の経済発展を担う基幹的労働力として総合的判断力に富む労働力が要求されるようになるからである。企業のこのような労務管理体制の近代化は、学校教育や職業訓練の充実による高質労働力の供給を十分活用しうる条件となろう。労務管理体制の変化は、賃金、雇用の企業別封鎖性をこえて、同一労働同一賃金原則の浸透、労働移動の円滑化をもたらし、労働組合の組織も産業別あるいは地域別のものとなる1つの条件が生れてくるであろう」と、今書かれても何の違和感もないような言葉遣いで、明確にジョブ型雇用社会への移行を唱道していました。