バブル再来!株価を動かす重大ニュース 人事、再編、物言う株主の思惑…記者が総力取材#6Photo:JIJI

ドラッグストア業界2位のツルハホールディングスはイオンの子会社で最大手のウエルシアホールディングスと2027年までに経営統合すると発表した。実は、ツルハHDは昨秋に経営陣による自社買収(MBO)で非上場化を検討していた。特集『バブル再来!株価を動かす重大ニュース 人事、再編、物言う株主の思惑…記者が総力取材』(全18回)の#6では、ツルハHDの幻のMBO案の中身と、断念した理由を明かす。また、業界にくすぶる次の再編の火種も明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

ドラッグ2位が最大手と統合へ
昨秋に検討された非上場化構想

 ドラッグストア業界2位のツルハホールディングス(HD)は2月28日、イオンの子会社で業界最大手のウエルシアホールディングスと経営統合の協議を始めると発表した。

 統合は、ウエルシアを完全子会社化したツルハHDがイオンの子会社になる流れだ。統合すれば単純計算で売上高2兆円の巨大ドラッグ連合が誕生する。

「イオングループの中核会社となる、ウエルシアとの統合が最善と判断した」。同日開かれた記者会見でツルハHDの鶴羽順社長はそう語った。

 だが、華々しい再編劇の陰で、実は異なるシナリオが展開した可能性がある。ツルハHDは昨秋に、経営陣による自社買収(MBO)で非上場化することを検討していたのだ。イオンの傘下入りを選んだ結末とは真逆である。

 足元で、市場は空前の“MBOブーム”に沸いている。1月16日には大正製薬ホールディングス(HD)がMBO目的の株式公開買い付け(TOB)が成立したと発表した。買い付け総額は7000億円超となり、日本企業のMBOでは過去最大となった。

 企業の合併・買収(M&A)の助言会社レコフによると、2023年は大正製薬HDやベネッセホールディングスなどの大型案件が相次ぎ、買い付け総額は過去最高の1兆4000億円に達した。目的は、上場コストの削減や長期的な成長戦略の策定など企業によってさまざまだ。

 一般的にMBOでの買い取り価格は、株価にプレミアム(上乗せ幅)を乗せる。例えば、大正製薬HDは買い取り価格について、TOBを公表する直前の終値に対して5割のプレミアムを乗せている。MBOを公表した銘柄は株価が大きく動くことになる。

 ツルハHDも同じようにMBOに踏み切るかどうかの瀬戸際にあった。実際、業界関係者によると、ツルハHDは日系証券会社とFA(財務アドバイザー)契約を結び、MBOに向けた準備を水面下で進めていたとされる。昨秋時点のツルハHDの時価総額は5000億円超で、6000億円規模の大型MBOとなる可能性があった。

 しかし、ツルハHDは最終的にはMBOを諦め、イオン主導の業界再編構想に乗る決断をした。次ページでは、ツルハHDがMBOを検討するに至った背景に加え、昨秋に検討された幻のMBO案の中身や断念した理由を明らかにする。

 さらに、ドラッグストア業界では、次の再編の火種もくすぶっている。ツルハHDと同じ構図に陥り、再編の焦点となっている業界大手の存在も明らかにする。