コンテンツとテクノロジーの
融合がソニーの強み

 コンテンツの話となると、現在のソニーが、かつてのソニーとはまったく別の会社になったと感じる人は少なくないだろう。しかし、その見方は必ずしも当たっていない。感動体験を提供するコンテンツをつくり、届けるために、ソニーが長年にわたって培ってきた技術がその重要性を増しているからだ。

 事実、昨今のエンタテインメントはすさまじい勢いで変化し、コンテンツの楽しみ方は大きく変わってきているが、その背景にあるのはテクノロジーの進化だ。テクノロジーとIPは、補完関係にある。祖業で培ってきたエレクトロニクスやメカトロニクスをはじめとする高度な技術が、いまのソニーのコンテンツIPのビジネスを支えている。

 具体的に見てみよう。直近のエンタテインメント業界の「最前線」といえるのが、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、メタバースだ。これらによって、ゲームや音楽、スポーツなどのコンテンツは、「観賞するもの」から「体験するもの」へと、劇的変化を遂げつつある。たとえば、メタバース内で開催されるコンサートに、世界中のファンたちがアバターに扮して集まり、リアルタイムで交流しながら楽しむことができる。

 メタバース内でコンテンツを楽しむ際、そのコンテンツの品質を決めるのは、3D空間を繊細に表現する映像技術、臨場感を生む空間オーディオ技術、高解像度のディスプレイやノイズキャンセリングの機能を備えたVRヘッドセットなどのデバイス、さらにメタバース内での触覚をリアルの身体に伝える「触覚フィードバック」、アバターの動きの正確さとリアルタイム性を確保するモーショントラッキングなど、多種多様なテクノロジーだ。

ソニーの技術により
動画や映像のつくり方が変化

 ソニーが持つ技術を存分に生かした商品の一例が、「mocopi(モコピ)」だ。ソニーは、500円玉サイズの6つのセンサーを装着することで体の動きをスマートフォンのアプリに取り込み、3Dのキャラクターを動かすことができるモバイルモーションキャプチャー「mocopi」」を開発した。長年蓄積してきたセンシングやAIの技術が活用されている。

「mocopi」を装着してステップを踏んだり、腕をあげたりすると、バーチャル空間でアバターがそれを正確に再現する。小型・軽量かつシンプル、さらにスタジオではなく自室で手軽にモーションキャプチャーを実現できるのは画期的である。また、持ち運びできるため、屋内外どこでも、写真を撮るように手軽に使うことができるし、4万9500円(発売当時・ソニーストア販売価格)という手頃な価格も魅力だ。