現在、アバターを使って動画投稿や配信活動を行うVチューバーらの間で重宝されているが、いずれメタバースが普及すれば、より多くのユーザーに広がる可能性がある。

 ゲームエンジンやグラフィック技術、モーションキャプチャーなどの技術の高度化は、従来型のエンタテインメントである映画のつくり方も大きく変えた。

 例をあげれば、ゲームエンジンを活用し、ハリウッドにある建物の部屋をスキャンして3DCGデータに変換。これを東京にあるソニーのバーチャルプロダクションスタジオに送り、大型LED画面に投影して再現。カメラワークと連動させ、アクターと一緒に撮影することで、あたかもハリウッドの建物の部屋で撮影したかのような映像をつくることが可能だ。

 こうした技術は、単に人やセットの移動が不要になるというコスト削減効果だけでなく、映画制作における時間的、物理的制約を取り払う。SFや歴史ものの映画の映像表現にも幅が生まれる。

エンタテインメントも
社会インフラの1つ

 ソニーは、コロナ禍において、いくつかの国の当局からコンタクトを受けた。「教育や医療を止めないために、エンタテインメントは自粛せよ」という要請かと思いきや、真逆だった。「こんな時だからこそ、絶対にエンタテインメントを止めないでほしい」といわれたのだ。

 エンタテインメントは、人を楽しませるだけでなく、心を揺さぶるような感動体験を生み出し、人と人とのつながりをつくり、人生をより豊かにする。現代を生きる人々には欠かせない社会インフラである。

 クリエイターを支え、クリエイターとともに新たなエンタテインメントを創造するのが、これからのソニーの目指す姿だ。

書影『ソニー 最高の働き方』『ソニー 最高の働き方』(朝日新聞出版)