ソニーの収益力アップが顕著だ。2023年3月期決算は売上高が過去最高の11兆円を超えた。快進撃の勝因は、直近10年間でリストラを断行し、世界トップシェアを誇る画像処理半導体(イメージセンサ)の研究開発や製造に集中したからだ。対してパナソニックやシャープ、東芝は構造改革の遅れが業績にも響いている。ソニーは今後3年間で半導体分野での設備投資が1兆円を超える見通し。「ウォークマン」で世界を変えた往年のソニーの真の実力が戻ってきたようだ。 (多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
過去最高の売上高11兆円超のソニー
2023年3月期のソニーグループの連結業績は、売上高が11兆5398億円(前期比1兆6183億円増)と過去最高だった。営業利益は1兆2082億円(前期比59 億円増)、経常利益は1兆1803億円(前期比628億円増)、純利益は9371億円(前期比549億円増)。前期比で大幅な増収増益が目立った。今回の決算を見ると、半導体などのハードウエア、ゲームや音楽などのソフトウエア(コンテンツ)の両面で、ソニーの収益力が高まっていることが分かる。
ソニーはハード面のモノづくりの力を磨き、それをソフト面にコンテンツの領域に持ち込むことで、世界市場への影響力を強化している。同社の事業運営は、他の国内家電メーカーと対照的だ。多くの家電メーカーは、23年3月期の第3四半期の決算発表時点で、業績の下振れ警戒感を示した。対して、ソニーはその強さを示すことに成功しつつある。
今後、ソニーは画像処理などに用いられる半導体の製造技術をさらに高め、新しい最終製品の創造を成し遂げるかもしれない。目下、世界全体でスマートホンの需要減少が鮮明だ。それは裏を返せば、ソニーがかつてのウォークマンなどのようなヒット商品を実現するチャンスともいえる。これからのソニーは、過去30年以上にわたって低成長に陥ったわが国の家電メーカーにとって、大きな刺激となることを期待したいものだ。