マネジメントの一部を任せてみよう
試しにマネジメントの一部を手放してみてはどうだろう。
課長の仕事の一部を、課長代理や主任に任せてみる。主任の仕事の一部を、現場の人に任せてみる。マネジメントの仕事を再定義、または丁寧に分解し、やめるものはやめ、改善および効率化をする。チームのメンバーに任せるものは任せる。
このようにマネジメントの権限や負荷を分散させることで、管理職のしんどさも軽減される。しんどそうなイメージも払拭される。
「そんなことをしたら、代わりに任された側がしんどくなって、ますますマネジメントの仕事を嫌いになるのでは?」
そう思う人もいるだろう。しかし筆者は、それは思い込みだと考えている。
なぜなら管理職の仕事の見えにくさもまた、しんどそうなイメージを助長しているからだ。人は見えないモノに恐れを感じる生き物である。本当はマネジメントの仕事にもやりがいや楽しさがあるにもかかわらず、それが伝わっていないのだ。
実際にマネジメントの仕事を任せることで、その仕事や管理職に対する思い込みが払拭されたり、マネジメントの仕事の面白さを知り、管理職に興味を持つ人もいる。管理職を「目に見えない、なんだかよくわからない妖怪」にしないことが大切だ。
体験するから、やってみたくなる
筆者はラッキーなことに、課長代理の頃から課長の仕事の一部を任されていた。
チームや人のマネジメントだけでなく、お金についても一千万円単位の金額を回していた。課の予算策定と実行も、課長と一緒に担っていた。もちろん承認行為は社内の権限規定に則り本部長や部課長が行っていたが、その内容は自分で考えて提案し実行管理していた。
おかげで、非管理職の頃からマネジメントの体験、会社のお金を使う経験を積むことができた。ビジネスパーソンとしての視座が上がり、経験値と素養も高まったため、今でも感謝している。
同時に、マネジメント業務の面白さと醍醐味を体感できた。管理職をやってみてもいいかな。そんな気持ちが芽生えた。
ありがたいことに会社がマネジメントに関するさまざまな研修も提供してくれたため、学習機会にも恵まれていた。この経験からも、マネジメントは早いうちから部分的にでも体験および学習しておくに越したことはないと思っている。
マネジメントはマネージャーだけの仕事ではない
メンバーが主体的にハンドルを握って仕事をした経験がない、すなわちマネジメント経験の不足は、指示待ち体質が生まれてしまう要因にもなる。
あなたが管理職の立場なら、マネジメントの仕事を分解して、その一部をメンバーに任せてみよう。マネジメント体験の創出こそ何よりの人材育成であり、あなた自身も正しく身軽になれる。メンバーと同じ景色を共有できることの効果も大きい。
任命されたから、マネジメントをするのではない。
マネジメントを体験し、やりたい、やってみようと実践していくうちに、マネージャーとして任命されるのが理想なのだ。
・マネジメントの仕事を分解し、管理職以外の人にもマネジメントの一部を任せる
(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)
作家/企業顧問/ワークスタイル&組織開発/『組織変革Lab』『あいしずHR』『越境学習の聖地・浜松』主宰/あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/プロティアン・キャリア協会アンバサダー/DX白書2023有識者委員。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『職場の問題地図』(技術評論社)、『「推される部署」になろう』(インプレス)など著書多数。