リーダーは「昇進をさせる理由」
「昇進をさせない理由」を明確に伝えるべき

 また、ピーター・F・ドラッカーは『マネジメント』(‎ダイヤモンド社)の中で、「機能と地位は切り離さなければならない」と書いています。

 これは軍隊では昔から行っている方法です。例えば少佐という地位の人の中には、中隊長という多くの部下がいる人がいる一方、技術開発などを部下を持たずに一人で行っている少佐もいるのです。

 ビジネスパーソンも階級である程度の給料が決まって、機能(職責)によって手当に濃淡を付ける方法もあるはずです。

「徳のある人」は、昇進させて部下を持たせてもいいのですが、大事なことは、会社が何を期待して昇進させたのかをはっきりさせることです。流行の表現で言えば、期待の“解像度”を上げるということ。たとえば、部下の育成による営業成績の向上なのか、あるいは技術開発力の向上といった具合です。

 昇進して権限が持ててラッキー、給料が上がってうれしいと単純に喜ぶ人もいますが、権限や給料が増えるのは責任が増えるということだから、責任に応じた仕事が求められていることを理解させるということです。

 昔の日本企業は年功序列と終身雇用が大前提でしたので、採用時の潜在能力に期待して、ある程度の地位まで昇進させていました。40年ほど前に、当時のある名門銀行に入行した私の大学の同級生は、「35歳までは昇給とか昇格に一切差を付けずに横並びで昇進できた」と話しています。

 今は潜在能力を見込んで昇進させるところは少なく、顕在化された能力、つまりパフォーマンスを基準に昇進を判断するところがほとんどです。その場合は、会社として、どのようなパフォーマンスを具体的に求めており、どういう評価したのかを本人にフィードバックする仕組みをつくる必要があります。

 昇進を見送られた人にも、見送られた理由をきちっと説明しなければなりません。会社がその人に期待していたパフォーマンスが十分に発揮できていないことを明確に示して、納得させることが大事です。そうしないと、自分は頑張っているのに評価されないと落胆し、転職を決めて、会社は貴重な戦力を失うことになります。