個人投資家の間で大きな支持を集めるベストセラー『株トレ 世界一楽しい「一問一答」株の教科書』、待望の続編『株トレ ファンダメンタルズ編』が発売された。「この株は売り? それとも買い?」「どっちの株を買う?」投資シミュレーションの感覚でクイズを解くうちに株の知識が自然と身につく1冊だ。前作ではチャート分析がテーマだったが、今作では業績や財務の読み方をわかりやすく解説する。著者は、ファンドマネジャー歴25年、2000億円超を運用してTOPIXを大幅に上回る好実績をあげたスペシャリストの窪田真之氏。本稿では本書から特別に一部を抜粋して紹介する。
「直感」で買うか、「論理」で買うか?
右脳・左脳の働きの違いを知っていますか。右脳は直感・ひらめきを、左脳は言語・論理的思考を担当しています。
右脳は、株価チャートや市場の空気を読むのに必要です。
左脳は、企業業績や財務諸表などファンダメンタルズを分析するのに必要です。
株を買う時、「ヨシッ!」と自信満々で買う時と、悩みに悩んで買う時があるでしょう。
直感と論理があっている時、つまり、右脳と左脳が両方とも「買え」と言っている時、私たちは迷うことなく買うことができます。
ところが、右脳と左脳が逆のことを言っている時は、要注意です。
「ファンダメンタルズを分析するとすばらしい株だけど、なんとなくイヤな予感がする」
こんな時は、しばらく様子見したほうがいいですね。左脳が買いといっていても、右脳がストップをかけてきているのですから。
右脳の直感を、軽く見てはいけません。思っている以上に莫大な情報量と経験が詰まっているからです。
チャートには、群衆の「心」があらわれている
右脳の知恵は、潜在意識の中にあるので、なかなか言葉にできません。言葉にならない直感を、どこまで信じるべきか迷います。
株式投資では、ありがたいことに1つだけ右脳の知恵を目で見られる場所があります。それが株価チャートです。
チャートには、あなた1人の右脳の知恵だけでなく、世の中のあらゆる投資家の右脳の英知の結晶が表れています。
つまり株価チャートに表れているのは、人々の「心」です。
多数のアナリストが「買い」だと言い、みんながすばらしいとほめる株が、よくありますね。そんな株のチャ-トを見たら、今にも崩れ落ちそうな危なっかしいチャートだったら、どう思いますか?
そこに見えているのは、群衆の本音です。
左脳は「買い」だと言っているのに、右脳では何かおかしいと思っている人が多いことが、そこにありありと出ているわけです。
みんなが熱狂していた成長株の成長ストーリーが崩壊し、ボロボロになっていく過程の初期に、こうした現象が起こります。
チャートには予見性がある
株価は景気に半年から1年、先んじて動く傾向があります。
株を売買している群衆の一人ひとりは、けっして優秀なエコノミストではないのに、群衆の売買で動く株価に、景気の予見性があります。
投資顧問会社で働いていた時、私の同僚で非常にパフォーマンスの良いファンドマネジャーがいました。彼は、いつもすごく良いタイミングで株を売買していました。
彼は半導体ブームの最中に、半導体株を売っていました。私が「なんで売るの」と聞くと、「あきちゃったから」と答えていました。
それからほどなくして、突然、半導体産業の業況が悪化してきたことには驚きました。
株価チャートを見ると、半導体株は、半導体ブームが続いているうちに値崩れが始まっていました。
半導体アナリストが総強気の時、半導体の専門家ではない群衆投資家は、「なんか変だぞ」と感じていたことがわかります。
こうした群衆の直感を生かすためには、ファンダメンタルズだけでなく、株価チャートも分析する必要があります。
あなたは右脳派それとも左脳派?
皆さんは、野性のカン・第六感が働くほうですか?
直感はするどいが、言葉でうまく説明できないというのなら、あなたは右脳派かもしれません。それは株式投資には大切な資質ですから大切にしてください。
人を論理で言い負かすのが得意ですか? 論理的思考は得意だが、株式投資はどうもうまくいかないというのならば、あなたは左脳派かもしれません。
左脳は、うまく使うと株式投資の武器になりますから、使い方をよく考えましょう。使い方をまちがえると、とんだ思い込みから傷を深めることにもなりますので注意してください。
株で勝つには、右脳と左脳がバランスよく働くことが理想的です。
(本稿は、『株トレ ファンダメンタルズ編』から抜粋・編集したものです。)