「この株は売り? それとも買い?」「儲かる株はどっち?」まるで投資シミュレーションのようにクイズを解きながら「株で勝つ技術」を身につける画期的な1冊『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』が発売された。著者は、ファンドマネジャー歴25年、2000億円超を運用してTOPIXを大幅に上回る好実績をあげたスペシャリストの楽天証券・窪田真之氏。利確、損切りで悩む個人投資家は多いはず。しかし、「それよりも重要なのは、いい株を手元に残すこと」と語る窪田氏は、資産が増えるポートフォリオの作り方を明かしてくれた。

株トレPhoto:Hakan Nural/Unsplash

売る際に買値は意識しない

──個人投資家の多くは利益確定のタイミングに悩みます。ファンドマネジャーは、利確についてどのように考えるのでしょうか?

窪田真之さん(以下、窪田):ファンドの運用で保有株を売る時、買い値は意識しません。買い値を上回っていても下回っていても関係なく、売るべきものを売るだけです。上昇トレンドが続く間は売りません。上昇が終わってチャートが崩れ始めた時に売ります。買ったとたんに暴落しても売ります。

 これは個人投資家の方々にも重要な考え方だと思います。利確や損切りで悩むのではなくて、手持ちの資産全体を増やすために要らないものを売る、という視点で考えるのが良いと思います。

──買い値にとらわれずに売るべきものを売ることが大事なのですね。

窪田:そうです。手持ちの株の中では、いいものは残します。ダメなものは売ります。

 例えば、2銘柄持っていて、1つが上がり、1つが下がったとしますよね。このような時、投資の成果が伸びない人は、上がった株を利確して、下がった株を保有し続けます。つまり、いい株を売って、ダメな株を残します。これは逆のほうが良くて、手元のポートフォリオにたくさんいい株を残していくことが大事です。

ダメな株はさっさと売る。これを淡々と繰り返す

──何を残すかは、何を捨てるかということでもあります。伸びそうにない株をきちんと手放すという点で損切りは大事ですね。

窪田:そうですね。暴落している株を放置すると投資のパフォーマンスが非常に悪くなりますから、いい株を買うことも大事ですが、それ以上に大事なのは、ダメな株をさっさと売ることです。

 私は、アクティブファンドを運用していました。アクティブファンドのマネジャーは、東証株価指数に負けたら存在価値がなくなりますし、2年連続で指数に負けたらクビになるとも言われる業界でした。この仕事では、指数に対して1日で1%負けたりすると、これはちょっとした事件。まずは何で負けたのか突き止めなければなりません。

──ポートフォリオの中に原因があるはずですね。

窪田:手持ちの株のどこかに損を生んだ株があるはずですから、それを見つけ、手放し、負けが続かないようにする必要があるのです。ポートフォリオを見ればどの株が下がったかすぐにわかります。その株のチャートを見て、売りシグナルが出ているようであれば手放す、ということを繰り返していくわけです。

──その選択でもチャートは重要ですね。

窪田:7割当たるチャートで買っていけば、長期的にやり続ければ累積で資産は増えていきます。7割当たるということは、3割は外れるということですので、外れた時は損切りして、当たっている株を残すという作業を淡々と繰り返していけばいいわけです。

 言葉にすれば簡単ですが、実行することは結構難しいのです。チャートを読み違えることはありますし、運、不運も影響します。3割の外れが3回連続することもあり、本来であれば3回連続で損切りすればいいのですが、そこで方針を変えて、損切りすべき株を保有してしまうといったことが起きるのです。

──いい株を残し、ダメな株を売るという基本が崩れるのですね。

窪田:そうです。外れたことに動転して基本と違うことやってしまうのが一番良くありません。不運で外すこともありますが、次は運良く利益が出ることもあります。ファンドマネジャーは何万回とトレードしますので、7割当たるチャートで売買すればいいと考えることができるのですが、個人投資家の場合はそこまで多くトレードできません。投資を始めた最初の年に10回トレードして、いきなり3連敗することもあります。そのような不運が続いた時こそ、淡々と勝てるパターンを維持できるかどうかが非常に大事だと思います。

窪田真之(くぼた・まさゆき)
楽天証券経済研究所 所長兼チーフ・ストラテジスト。
大和住銀投信投資顧問などを経て、2014年より楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト。2015年より所長兼務。日本株ファンドマネジャー歴25年。年間100社を超える調査取材をこなし、公的年金・投資信託・NY上場ファンドなど20代で1000億円以上、40代で2000億円超の日本株運用を担当。ベンチマークである東証株価指数(TOPIX)を大幅に上回る運用実績をあげてきた。楽天証券では2014年から現在まで、同社投資メディア「トウシル」にて月曜日から木曜日まで「3分でわかる!今日の投資戦略」を連載。月間200万ページビューを超える人気コラムとなっている。主な著書に『株トレ 世界一楽しい「一問一答」株の教科書』(ダイヤモンド社)がある。