北京、上海、深センなど
大都市圏では景況感に変化の兆し

 今回の大規模な経済対策で、金融市場、特に株式市場を取り巻く雰囲気は変わりつつある。それは、資産の値動きからも確認できる。9月前半、デフレ経済が深刻化する懸念が上昇したことで、主要投資家は本土・香港株を売りに回り、国債を購入した。

 一方、9月23日以降、中国の金利は上昇(国債価格は下落)した。国慶節中、香港の国債流通利回りは上昇して終えた。リスク資産から国債に向かった資金は、急激に国債から株式、不動産などに再還流した。

 資産効果は、北京、上海、深センなど大都市の景況感を支える要素になるだろう。深センで不動産見学に訪れる人が急増したことは、大都市の住宅価格が徐々に下げ止まり、消費者の心理が変化したことを示唆している。

 政策が不動産需要をかさ上げするとなると、建材、建機、建設作業員などの需要も増えるだろう。政策の効果(信認)が続く間、不動産市況は下げ止まり、生産活動などの悪化ペースは緩む可能性はあると考えられる。

 大都市圏での不動産在庫の水準も相対的に低い。2020年末と23年末を比較すると、北京、上海、深セン、広州で、住宅在庫の消化に必要な期間は10~15カ月程度に伸びた。大連、天津などの2級都市は、10~20カ月程度に伸びた。3級都市以下(いわゆる農村などの地方都市)は、10カ月程度が30カ月程度に大幅に伸びた(易居研究院のデータ)。

 在庫の圧縮時間が短い分、在庫処理の可能性は高いと考えられる。大都市は地方居住者に門戸を開くなど、規制も緩和した。大都市は、経済的な利得確保の機会も多い。北京は政治の中心地であり、上海は金融機関が多い。深センはITスタートアップ企業が多く集積する。今回の経済対策後は、目先、大都市の景況感を下支えする要素になるだろう。