中国の根深い問題は「地方」にある
都市と農村の深刻な経済格差とは?
一方、地方都市がどのように不動産問題に対応するか、依然として不透明な部分は多い。20年8月の「三条紅線」(当局の融資厳格化の方針)発動から直近の傾向として、都市の階級が低下するほど、住宅価格の下落は鮮明化した。中国政府が投資主導の経済運営を重視したことの影響は深刻だ。
リーマンショック後、沿海部などの大都市は、企業の設備投資を支援した。雇用、所得機会を得るため、地方から都市への出稼ぎ労働者(農民工)は増えた。本来、人口が減少すれば不動産需要は減るのだが、地方都市はそうならなかった。不動産バブルは膨張し、価格上昇期待も高まった。それは投機熱をあおり、住宅の供給過剰問題を生み出したと考えられる。
地方政府は価格上昇期待をよりどころに、デベロッパーに土地の利用権を譲渡し、財源を確保して公共事業などを打った。実態としては、成長期待の高い産業の集積が難しい中、不動産に頼らざるを得なかったのだろう。
その結果、中国地方政府・地方経済の不動産依存度は高まった。一例として、米ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授らは、「中国の住宅在庫の60%超は3級以下の地方都市に集中した」と指摘している。不動産バブル崩壊の負の影響は、大都市より、地方都市で深刻と考えられる。
22年以降、中国の人口は減少に転じた一方で、農村から大都市へ移り住む人は増えた。地方政府の不動産問題の解消には、追加の対応が必要になるかもしれない。
中国政府は、今後も不動産支援や金融緩和の追加策を発動するだろう。その中で、戸籍制度の改正による都市と農村の経済格差是正、地方財政の土地依存脱却が進まないと、地方の不動産問題が深刻化する可能性は残るはずだ。
当面、大都市に比べ地方都市の景況感改善はもたつき、状況次第では財政の悪化に拍車がかかる展開も予想される。中国政府が大胆な経済対策を発動したことは重要だが、それが不動産問題の根本解決につながるかどうかは分からない。先行きはいまだ不透明であり、急反発した本土や香港の株価が調整し、金融市場の不安定感が高まることもあるだろう。