今週のキーワード 真壁昭夫Photo:PIXTA

中国政府が9月下旬に大規模な経済対策を発表したことで、株式市場は敏感に反応。上海と深セン取引所では合計約53兆円に上る過去最高取引額を更新した。10月初旬の大型連休中には、「大都市でマンション購入を検討する人が増えた」というニュースが出回ったことも、不動産市況の悪化に歯止めがかかるかもしれないとの期待を抱かせる。しかし、中国経済が上向くかどうかは依然として不透明だ。不動産バブル崩壊の負の影響は、大都市より、地方都市で深刻だからだ。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

不動産デベロッパー株は急騰も……
中国の不動産市況が回復するのはいつ?

 9月下旬、中国政府は大規模な経済対策を発表した。金融緩和策、マンション購入支援、本土株買い支えなど幅広い対策を打つことになった。その主な狙いは、不動産市況の悪化を何とかして食い止めることだ。

 今回の政策の発動により、香港で取引が続く不動産デベロッパー株は急騰した。主要投資家は、経済対策をそれなりに好感したといえる。一部の大都市は、非居住者が住宅を購入できるよう規制を緩和した。雇用、所得、就職などの機会が相対的に多い大都市に移住する農村居住者は増加するだろう。

 報道によると国慶節の連休中(10月1~7日)、大都市を中心にマンション購入検討者は増加したようだ。主に都市部で不動産市況の悪化に歯止めがかかるかもしれない“希望の光”のような感がうかがわれる。短期的には、大都市圏の住宅価格に下げ止まりの兆しが出る可能性はあるだろう。

 ただ、地方の農村近郊などの不動産市況が本格的に回復するかどうかは不透明とみるべきだろう。人口減少は地方経済に追い打ちをかけ、個人消費や不動産需要などの落ち込みで税収は減り、地方財政の悪化リスクは高まる。中国では、年金や医療など社会保障の需給内容が農村と都市の戸籍にひも付いている。地方政府の財政不安は、社会心理の悪化につながることも考えられる。中国の根深い不動産問題解決は長期戦になりそうだ。