ユナイテッドが「成田ハブ」復活へ
今後の増便にも期待大!

 では、なぜ今のタイミングで成田からの以遠権路線が復活したのだろうか?

 第一の理由は、米国からフィリピンへの需要増がある。ユナイテッド航空はハブ空港の一つであるサンフランシスコからシンガポール、マニラの2都市に就航しているが、このうちマニラ線については開設以来、好調が続いている。フィリピン第二の都市であるセブへは、米国本土から直行便を出すには需要が足りないが、成田で集めた日本経由の需要も加えれば、路線開設のバリューがあると判断したのだろう。

 二つ目の理由は、グアム線の不振だ。近年の円安ドル高は日本人の海外旅行に大きな影響を及ぼしており、グアム線は苦戦が続く。ユナイテッド航空は10月26日を最後に福岡~グアム線の運休に踏み切るなど同地への路線を縮小した上で、一部機材を成田ベースに移す方針のようだ。

 ただし、それだけではない。ユナイテッド航空の路線開設状況を見ると、同社は成田空港を、米国とアジア各地をつなぐためのハブ空港として再び活用する方針であることは明らかだ。

 セブに続き、25年4月2日にはパラオのコロール、5月1日にはモンゴルのウランバートル(季節便)、7月11日には台湾の高雄への就航を始める。今後も、小型機のボーイング737を使って、米本土からの直行便のないアジア路線を成田から開設するだろう。

 これには第三の理由が関係している。地政学的にも、東京をハブにすると都合が良いのだ。実は、大韓航空とアシアナ航空の合併により、韓国拠点のスターアライアンスメンバーは消滅することが決まっており、ロシア上空通過禁止措置によって、米東海岸からの韓国・中国への路線は最短経路を取れなくなってしまった。

 他社の状況を見ると、デルタ航空は20年春に、東アジアのハブ機能を成田ではなく、提携相手の大韓航空が拠点とするソウル・仁川空港に移した。しかし現在は、東海岸からの直行便は同社最大の拠点であるアトランタのみで、ボストンやニューヨークといった他のハブ空港からは路線を開設していない。

 そうした中、東京は米国から最も近い距離にある東アジアの大都市であり、ロシア措置の影響も回避でき、北米~東京、東京~アジア各地の需要は計算が立てやすい。まさに、三拍子そろった場所として成田が再び注目されているのだ。

 こうなると、ユナイテッド航空の次のアジア路線(日本からの以遠権を使った)はもちろん、アメリカン航空やデルタ航空の動向も気になるところだ。円安や物価高で日本人の海外旅行マインドは下火になっているものの、フライトの選択肢が増えることは大きなメリットである。今後に期待したい。