渾身の演技を披露しつつ、私は女の子の肩越しに先ほどの親子の様子をチェックした。子どもが「しっぽ」と言いながら、サルをまじまじと観察し始めた。親もそれにつられていた。ミッションコンプリートである。連行した女の子も、あれはアカゲザルだと認識してくれた。一石二鳥である。私が少し恥ずかしいだけだ。

書影『しっぽ学』(光文社新書)『しっぽ学』(光文社新書)
東島沙弥佳 著

 おまけに脳内の仕事スイッチがすっかりオンになり、なんの動物を目にしてもついお尻の方ばかり見るようになってしまったわけだが、それはそれで、まぁよしとした。

 今ならもう少しうまい声の掛け方もあったと思うのだが、当時の私にはあれが精一杯だった。動物園で動物のお尻の方ばかり食い入るように見ていたり、同行者に突然しっぽの話を始める人間がいたら、それはきっと私である。

 皆さんも「なんのサルだろう」あるいは「これニホンザルかな」と思った際にはぜひしっぽをよく見てもらいたい。