仕事スイッチは完全にオフ。モルモットと触れ合ったり、キリンを見たりと、頭の中はすっかり桃色・非現実モードに浸っていた。だが、サルの展示コーナーに差し掛かったときに事態は一変してしまったのである。耳に入ってきたのは、ある親子の会話。

「わあ、○○ちゃん見てごらん。おサルさんがいるよ」
「ほんとだ。あれなんておサルさん?」
「あれはね、ニホンザルだよ。お山にいるんだよ」

 ちょっと待て。思わずぐるりと振り向く。違う。そこにいるのは、アカゲザルだ。ニホンザルではない。ニホンザルは日本の固有種だ。間違って覚えてほしくない。子どもの記憶力というのは、意外とすごいのだ。しかも子どもはしっぽをよく見ている。大人はともかく子どもの方へはなんらかのかたちで訂正を入れたい。

 一番シンプルなのは、「もしもしすみません。今のお話を偶然耳にしてしまったのですが、あれはニホンザルではありません。アカゲザルですよ。しっぽをご覧なさい」と私が直接伝える方法だ。