だが、これでは単なる不審者案件となってしまう。そうだ、どこかに解説パネルがあったはず。そこを通りかかったら「あ、ニホンザルじゃないんだって。このおサルさんはアカゲザルっていうんだって」という流れになるかもしれない。
しかし解説パネルは無情にも、親子からずいぶん離れたところにあった。これでは解説パネルと出会う前に、親子は別の動物のところに行ってしまうかもしれない。
数秒悩んで私は、同行者の中にいた小学生の女の子(確か京都大学関係者のどなたかのお子さんだったように思う)の手を取って、親子のそばへとなるべく自然に歩いて近づいた。もうこれしかない。
「わ!おサルさんいるなあ。アカゲザルやって!」
少し大きめの声で連行した女の子に話しかける私。そう、こちらの会話を無理矢理耳に入れてしまおうという作戦である。
「ほら、しっぽ見てみ!ちょっと長いね。ニホンザルはこのくらいやけど。あのおサルさんちょっと長いなあ」