交通事業を起点に
さまざまなサービスを展開
この、乗り合いタクシーのサブスクサービスは事業の大きな柱ではあるが、決して採算が見込める領域ではないと田島さんは言う。
「たとえば行政が運営するバスにしても、年間1.6億円ほどの予算をかけても2000万円しか売り上げが立たない不採算事業です。ドライバーの人件費や車両コスト、ガソリン代など、固定費が非常に多いのに対して、地域の足として運賃をあまり上げられない事情があるからです」
そこで田島さんは、タクシー事業だけで売り上げを確保するのではなく、交通サービスをベースに人々の移動のニーズを開発することに重点を置く。
「魅力的な目的地があれば人は移動しますから、交通事業の一環で三豊市のツアールートを提案し、街中の周遊を促すことで観光客の取り込みを図っているんです。父母ヶ浜にしても、以前は年間5000人ほどしか訪れていなかったのが、SNSでバズったことで55万人まで増えましたからね」
また、車内にタブレットを設置してサイネージ広告事業を展開したり、移動を含めて高齢者の身の回りのサポートを行う介護事業など、交通を起点に事業の幅はどんどん広がっている。
「前提として、地域のタクシー会社が持っている車両と人材を使わせていただく事業設計ですが、全国的にドライバー不足が指摘される中、うちのサービスは固定給が出せる仕組みなので、最近は若いドライバーが増えているんです」
一方の介護事業については、正社員を雇用するのではなく、空き時間を使ってスタッフがスポットで高齢者のサポートに向かう、シェアワークの手法を採用している。
これまでの三豊市になかった、隙間時間を活かした働き方が可能で、子育てを終えた女性や定年後のアクティブシニア、あるいは副収入を求める会社員など、多くの人材が集まっているという。