家族と一緒にキャンピングカーで全国各地へ
田舎への憧れが強かった
出身は東京都江戸川区。親族が皆、徒歩圏内に住んでいる環境で育ったため、「田舎への憧れが人一倍強かった」と田島さんは振り返る。
「実家が車屋だったのでキャンピングカーを持っていて、家族と共に全国各地を巡っていました」
そうしたマインドから、地方にも積極的に縁を求めた結果、東京のほかに沖縄や香川でも行政から教育事業を受託するようになり、3つの地域を行ったり来たりしながら、仕事と授業をこなす生活が始まる。コロナ禍により、授業がオンラインになったことから、東京に執着する必要がなかったことも大きいのだろう。
活動の範囲を大きく広げた田島さんが、より「ピンときた」のは香川だったという。
「沖縄では関係者数名でシェアハウスを借りていたのですが、香川県三豊市はなぜか“ここには長く住むことになりそうだ”と直感して、自分で家を借りることにしました。そのうち沖縄の方の仕事が落ち着いてきたので事業を整理し、正式に三豊市への移住を決意したんです」
三豊市とは香川県の西側、人口6万人弱の県内第三の都市である。近年では、およそ1キロのロングビーチを持つ父母ヶ浜の美景が、「日本のウユニ塩湖」と呼ばれて話題を呼んでいる。
田島さんは2022年9月に住民票を三豊市に移し、この地域で教育事業を切り口に、着々とワークフィールドを広げていくことになる。
「最初に着手したのは、教育委員会から課されたミッションの一つで、地域の事業者さんと共に、小中高生を対象とした部活動を作る取り組みでした。ところがある日、部活を休む子どもたちの欠席理由に、“親が送迎できない”ことが最も多い現状に気づき、そこに大きな課題を感じたんです」
昨今、教員の負荷軽減のために部活動を地域にアウトソースする動きがあるが、その半面、部活のために子どもたちの移動距離が延びているという、ローカルならではの社会課題が隠れていたのだ。
「バスや電車が整っていない地域では、移動がその日の親の都合に左右されるのは仕方のないことです。でも、それによって学びや体験の選択肢が減ってしまうのは由々しき問題でしょう」
そこで「移動格差から来る教育格差の是正」という目標を新たに掲げ、田島さんは一念発起して暮らしの交通を設立。これが今から2年前のことだ。