地方で働くのはどのようなメリットがあるのか。そして、注意したいこととは?時代の流れとともに、ビジネスパーソンの働き方は多様化している。近年では新卒でもIターンやUターンを希望する人が増えている。大学まで住んでいた東京を離れ、長野の企業に就職した20代男性に話を聞いた。(取材・文/フリーライター 友清 哲)
「ものづくり」がしたい
門型洗車機に見出したやり甲斐
ガソリンスタンドや洗車場に設置されている門型洗車機。この分野で長年、業界トップクラスのシェアを誇るエムケー精工に加藤洋平さん(24歳)が新卒で入社したのは昨年、2023年春のことだ。
エムケー精工は長野県千曲市に本社を置き、全国に拠点を張る大手完成品メーカーである。とりわけモビリティ関連の研究開発に長けているイメージが強い企業だが「自動車に関心があったわけではない」と加藤さんは意外なことを言う。
「学生の頃からものづくりの世界に興味があり、卒業後は完成品メーカーに行きたいと思っていました。自分が手掛けた製品が、そのまま世の中で使われている様子を見られるのは、部品メーカーにはない醍醐味だと感じたからです」
しかし、自動車や家電といったメジャーな分野は競争が激しく、何か新しいアイデアを思いついても、たいてい誰かが先にやってしまっている可能性が高い。
「その点、洗車機というのは比較的ニッチな領域なので、面白いのではないかと感じました」
門外漢の目線からすると、街中で見かける門型洗車機はある程度完成されていて、どのあたりに進化の余地が残されているのかは想像しがたい。しかし加藤さんによれば、省スペース性や節水性などにまだまだ伸び代があり、特に節水については環境問題の観点からも重要視されているのだという。