地域のタクシー会社と
共存するモデルを確立

 暮らしの交通が手掛けるサービスの一つが「mobi」。これは定額乗り放題のタクシーサービスである。

「暮らしの交通は地域内の企業13社から出資を受けて立ち上げたもので、そのうち3社が地元のタクシー会社です。システム自体は既存のものを借り、タクシー会社と連携しながら、地域の皆さんが買い物や通勤・通学のために『mobi』を使って便利に移動できるようにする、というサービスですね」

 外様であるはずの田島さんだが、地域のタクシー会社と競合せず、むしろ巻き込む形で事業化していることは大きなポイントだろう。

「地域の企業と食い合うことは、どうしても避けたかったですからね。だから、三豊市に来た当初はまず、街のスナックに通い詰めて、地元の人たちと仲良くなることに徹しました。“三豊で何回カンパイしたか”という、KPI(カンパイ・パフォーマンス・インジケーター)を自分に課して頑張りました(笑)」

 酒場を中心に「東京からやってきた面白い若者がいる」といううわさが広まり、次第に協力者を増やしていったことが、暮らしの交通の礎になっている。

 現状、ユーザーの6割が地域の人々で、観光客が3割。シニア層が1割程度にとどまっているのは少々意外な結果だ。

「どこの地域も同じだと思いますが、免許返納率は少しずつ上がっていても、実際に高齢者が免許を手放すのは、施設に入ったり入院したりといったタイミングが大半です。もちろん、『mobi』が定着して躊躇なく免許を返納できるようにするのが理想ですが、これはもう少し先の目標になりそうです」

 また「想定していたよりも学生の利用が多い」と言う田島さんだが、これは日頃から地域の高専などで説明会を実施し、自由な移動を実現することでこの街がいかに楽しいものになるかを説いて回った結果だという。

【地方で働く】「乗り放題タクシー」で香川の地域住民を救え!若き起業家が自らに課した“独自のKPI”とは?高専での説明会風景
【地方で働く】「乗り放題タクシー」で香川の地域住民を救え!若き起業家が自らに課した“独自のKPI”とは?田島さんが手掛けている「mobi」の車両