サブスク時代のビジネスは
「売った後の顧客支援」がカギ
「所有しない消費」は個人消費でも広く浸透しました。
デジタルのプラットフォーム上で個人が所有するモノや空間などの資産の貸借が容易になり、「シェアリングエコノミー」の市場規模はここ数年で急拡大しました。
モノやサービスを所有・購入するのではなく、「一定期間利用できる権利」に対して対価を支払うサブスクビジネスがあらゆる分野で開花し、これによって、顧客がサービスを利用しながら満足度や利用価値を向上させる仕組みが大切になりました。
旧来型のビジネスは、商品やサービスの単発的な取引で収益を得る「フロー型(売り切り型)ビジネス」が主流でした。そこでは、消費者が「所有」することを前提としたビジネスでしたが、デジタルのプラットフォームでは、必要なときに必要なモノやサービス、スキルなどを「利用・シェア」する消費へトレンドが移行しました。こうした変化を受け、継続的な取引で収益を得る「ストック型」ビジネスに舵を切る企業が増えました。
従量課金のサービスを提供するビジネス形態は、顧客との長期にわたる契約を締結したり、会員化を図ることで安定的な収益を得ることが期待されます。ストック型ビジネスでは、「売った後の顧客への支援」が利用の継続、顧客の離脱防止のカギをにぎり、これが収益を大きく左右します。
“サブスク疲れ”が続出する中で
ビジネスに求められる要素とは?
もちろん、ストック型ビジネスへの移行や、新しく台頭したデジタル技術を使用しただけで、競争優位を構築できるわけではありません。実際にさまざまな商品やサービスのサブスクが次々に誕生しましたが、姿を消していくものも少なくありません。
宮下雄治 著
“サブスク疲れ”なる言葉も聞かれるようになりました。筆者もその1人ですが、気づいたら身の周りは使い放題のサブスクに囲まれ、中には契約していたこと自体を忘れている始末。「使わなきゃ」、「元を取らなくちゃ」という義務感に駆られるものの、限られた時間の中で整理せざるを得ずに解約した経験が何度かあります。
サブスクリプションという新しい消費体験に慣れてきたユーザーは、サービス内容や値ごろ感に対してますますシビアになってきています。重要なことは、デジタルの力を利用して顧客体験を刷新し続けることです。
すなわち、求められるのは「この商品・サービスを使い倒したい!」と思わせるほどの価値を創り続けることです。そのためには、顧客の忖度ないリアルな声を収集し、顧客が満足していること、それとは逆に不満足に感じていることを把握することが肝要です。良いニュースよりもむしろ耳の痛い悪い声に耳をかたむけ、改善・改良に磨きをかけ続けるほかありません。