良質な「顧客体験」を競う時代へ
マーケティングの変化
デジタルを駆使した商品やサービスは、従来のリアル社会を前提とした経済の常識を覆しました。商品やサービスそれ自体に加え、それらの「見つけ方」、そして選択肢を絞る「選び方」、さらには実際の「買い方」といった「買い物の仕方」から、「利用(消費)の仕方」まで、あらゆる局面のあたりまえや常識がアップデートされました。
これにより、「顧客体験(CX:Customer Experience)」が今日のビジネスの重要キーワードになりました。商品やサービスの機能的な差別化が難しくなった現在、消費者は感情的・感覚的な「体験価値」で企業やサービスを選ぶ傾向が強まりました。
このことは、商品、サービスを問わず、あるいはオンライン、オフラインを問いません。顧客を惹きつける企業は、商品やサービスの購入後に「良い買い物をした!」と思わせる良質な顧客体験を提供しています。
心に触れる良質な「顧客体験」をどのようにデザイン・提供するか。そこでは単に体験を利用したマーケティングではなく、心に触れる良質な顧客体験そのものをつくり出すことがマーケティングの中心課題に台頭する時代になりました。
多くの企業でサブスクによる
SaaSに移行する動きが加速
この10年におけるビジネス環境のいちばんの変化として、IT大手が提供するクラウドベースのサービスが急速に普及したことが挙げられます。マイクロソフトのかつての主力事業は、ソフトウェアのCDを出荷することでした。
発売当初から不評を買った「Windows8」やiPodの牙城を崩すにはいたらなかった携帯音楽プレイヤー「WindowsZune」、ノキア買収によって大掛かりに取り組んだ「WindowsPhone」の失敗など、かつての輝きを失っていたマイクロソフトは、2014年にサティア・ナデラ新CEOの指揮のもと、クラウド化とAI事業へ舵を切りました。Microsoft365やMicrosoftDynamics365(CRM/ERPビジネスアプリケーション)などクラウド上でさまざまなアプリケーション機能を提供するサービスへ移行しました。
クラウドベースのシステム基盤上でソフトウェアやアプリケーションを利用できるサービス形態をSaaS(Software as a Service)と呼びます。SaaSの利用料金はサブスクリプション(サブスク)方式で、顧客は初期投資やサーバ費用、開発・更新費用を抑えられるとともに、常に最新の機能や修正プログラム、セキュリティ更新などが利用できます。こうした利便性からここ数年、多くの企業で、サブスクによるSaaSに移行する動きが加速しました。