腸内環境が悪くなるとバリア機能が低下し、下痢や便秘などが起きる。これら腸内の炎症は、全身に不調をきたす原因となる可能性もあるという。
「例えば、便秘の症状や重症度が慢性腎臓病や新血管疾患、パーキンソン病などの発症リスクと関連していることが報告されています。つまり、腸内環境の悪化は、全身の炎症や老化に関係しているというわけです」
腸内環境が良い状態を維持するには
豆類を食べてレッドミートを控えるべき
内藤氏が関与している「京丹後長寿コホート研究」においても、それを裏付けるデータがわかっている。京丹後長寿コホート研究とは、100歳以上の人口比率が全国平均の3倍を誇る京丹後市で、長寿の秘訣を探るものだ。内藤氏が在籍する京都府立医科大学と京丹後市を中心に調査が行われている。
「京丹後長寿コホート研究では、京丹後市の65歳以上の方の筋肉量、握力、歩行速度、また糞便を用いた腸内細菌の調査などを行なっています。この研究結果も踏まえると、健康な高齢者は腸内環境がいい。また、腸内環境と食生活の関係もわかってきました。魚や豆類、麹などを使用した日本食の摂取頻度が多い人ほど、ビフィズス菌などの腸内細菌の占有率が高い傾向にあります。特に『大豆などの豆類をよく食べる』『牛、豚、羊などのレッドミートをほとんど食べない』ということが、その傾向と相関しているデータがあるのです。このことから、腸内環境をよい状態に維持するには、大豆などの豆類を積極的に食べ、レッドミートを控えることがポイントになると言えます」
現在では、健康や筋肉増量の側面からたんぱく質摂取の重要性が叫ばれている。そのため、たんぱく質が多く含まれる肉類を意識的に摂取している人も少なくない。
しかし、こうした肉食は日本人にとって、相性が良くない側面もあるのだとか。内藤氏は本来日本人が持つ腸内細菌について触れながら、次のように指摘する。
「そもそも、保有している腸内細菌、および腸内環境は、人種などによって異なります。例えば、パプアニューギニアの人は主に芋類を食べているにも関わらず筋骨隆々としていますが、それは彼らが炭水化物からアミノ酸を作る腸内細菌を持っているから。日本人は、そうした腸内細菌を持っていないので、たんぱく質が生きる上で必要なのです」