オフィスで毎朝行われていた
昭和の時代の“ダンス”

 昭和の時代は、オフィスでも毎朝皆が同じ“ダンス”をするという習慣が多くの会社でも見られました。40代後半以下の読者の方々には、ほとんどなじみがないかもしれませんが、それがラジオ体操です。

 1928(昭和3)年にかんぽ生命保険の前身である逓信省簡易保険局が先駆けとなり、国民の健康保持推進のために「国民保健体操」を制定し、普及が始まりました。

 昭和初期はまだテレビはなく、ラジオも一家に一台とはいかない時代です。ラジオの号令や図解だけでは伝わらない体操の動きを練習し、人々に伝えたのは全国の郵便局の郵便局員だったそうです。現在、私たちになじみのある「ラジオ体操第1」は、1951年(昭和26年)に始まった3代目のラジオ体操です。

 このラジオ体操を毎朝オフィスで皆と踊ることが、終身雇用制度のもとで職場の仲間と長い時間を共にする日本型雇用において、チームメンバー同士の絆を育み、組織のウェルビーイングに何らか影響を与えていたとも考えられるかもしれません。

 歌と踊りは、太古の昔から人間のコミュニティにおける祝祭の場にいつもありました。有名な作家であるVicki Baum氏は、「ダンスは、人間が幸せになるための近道の一つだ」と言っています。

 またZ世代がいま人気だと思う部活No.1は「ダンス部」だそうです。確かに最近では、TikTokなどで友達同士が「踊ってみた」動画がバズる現象をよく見聞きします。

 このように同じ踊りを皆で踊るというシンプルな行為は、特に若い世代が未来に希望が持ちにくい閉塞感漂う今の日本社会における、ウェルビーイング実現のために案外有効なのかもしれません。

(インテグレート代表取締役CEO 藤田康人)