個々が活躍すれば
組織も華々しくなる

慶子さん2

田中 Travis Japanというグループの一員であることは、川島さんにとって、どのような意味がありますか。

川島 グループは言い換えれば「組織」です。たとえば企業は目標が決まっていて、みんなが同じ方向を目指しますよね。僕たちも、「デビューする」とか、「ダンス大会に出演する」とか、組織として、ひとつの方向性を目指すことも当然、あります。

 一方で、個人個人がそれぞれの方向性を目指すことも大事だと思っています。そしてみんなで「レーダーチャート」を大きくしていくんです。

田中 レーダーチャートですか?

川島 はい。ケロッグなどのシリアルのパッケージの裏には、栄養素のレーダーチャートが載っていますよね。それが大きければ大きいほど、食べる人は満足度が高くなる。

 それと同じで、個々が方向性を持ってがんばれば、グループ全体のレーダーチャートが大きく、華々しくなっていく。同時にグループ間でも、お互いが満足して活動しているということが伝わると思うんです。

田中 なるほど、高い技能を持った「個」が集まる形となり、それらの個がお互いに応援し合う。素晴らしい関係性ですね。

川島さん3

川島 基本はそうですが、キャラクターや得意分野、やりたい領域が重なることも当然あります。その場合は、どこかで我慢したりすることもある。

 組織なので、全体のバランスを考えて、立ち位置を決めなくてはならないこともあります。僕はグループ内で「インテリ」の立ち位置といわれていますが、もしグループ内にそうした立ち位置の人が何人もいたら、その路線は目指していなかったと思います(笑)。

 ですので、自分にとってのブルーオーシャン、隙間産業を見つけることが大事ですね。自分だけのフィールドが見つかりそうだったら、なじみのないことだったり、難しそうだったりしても、積極的にそこへ飛び込んでみる。僕はこれまでそのようにして仕事に取り組んできました。

田中 エッセイからも、ご自身を取り巻く環境に対する「俯瞰(ふかん)力」がすごいと感じました。いつから、自分だけのフィールドを意識するようになったのでしょうか。若い頃からずっとグループの中で活動していたことで鍛えられたのでしょうか。

川島 子役時代が原点です。ほかの人と同じものしか持っていなければ、オーディションで選んでもらえません。他人と違う何かを持てているだろうか、子どもの頃からそのことは意識してきました。

田中 他者から見た自分、つまり、自分や環境を俯瞰して見ることのできる視野の広さ。そして、日記を書くことなどで実践している、自分と向き合える内省の深さ。

 この両方をお持ちだからこそ、夢をつかむこともできたのではないかと、拝察しました。

川島 なるほど……。そのようには考えていなかったので、逆に納得させていただきました(笑)。ありがとうございます。

資格を取ってみることで
その職業へのリスペクトが生まれる

田中 資格もいろいろとお持ちですよね。「宅建士」など、芸能人で持っている方はあまり聞いたことがありません。

川島 アイドルとして活動するにも、やはり武器はたくさんあったほうがいいと思うんです。宅建のような国家資格を持っているアイドルは周囲にいなかったので、試験勉強をして取得しました。

 勉強は昔から苦ではありませんでした。資格を取るときは、ゲームやキャンプも我慢して勉強しますが、無事に試験に受かれば、我慢から解放される。その瞬間が心地いいんです。魚が意識しなくても泳いでいるのと同じで、勉強は生活の一部であり、趣味でもあります。何かの資格を取れば、また次をめざすために勉強を始める。

「国内旅行業務取扱管理者」という資格を持っているので、今年は「総合旅行業務取扱管理者」という、海外旅行も扱える資格の取得を目指しています。

田中 「リスキリングが課題だ」といわれる一方で、仕事をしながら学習意欲を維持する難しさが話題になったりしています。学習意欲を持ち続けるコツはありますか?

川島 経験するからこそ視野が広がるということがありますよね。学習し、資格取得をする経験から、相互理解や多様性につながっていくと思います。

 大学3年生のとき、就職活動をしている友人たちがこう言っていたんです。「電車の中でウトウトしているビジネスパーソンを見ると、ああ、この人も、今の僕たちが経験しているような、厳しい就職活動を乗り切ってきたんだなと、尊敬の念が湧くようになった」と。とてもいい話だなと思ったんです。就職活動を経験したことで、それまでの先入観が払拭され、理解やリスペクトにつながった。

 努力して試験に受かれば、資格という形のあるものを取得し、客観的に認められる肩書も手に入る。それによって自分も磨かれる。もちろんそれらも大事ですが、何より、同じ資格の所有者やその職業の人への理解が一段階上がり、よりリスペクトできるようになります。自分が実際にその仕事をしなかったとしても、その業界にいる人たちがどれほどすごいことをしているのかということを、垣間見ることができる。

 ほかの人が経験している努力や、味わっている痛みを、ひとつでも多く体験し能動的にしておくことで、社会や周囲の人々への感謝も生まれると思っています。直接、仕事で活用できる資格であればそれに越したことはありませんが、たとえその資格を実践で使わなかったとしても、資格の取得というのは、自分にとってはとても重要で、意味があることなんです。

田中 多くのビジネスパーソンにとって、非常に示唆深いお話になったかと思います。本日はありがとうございました。

おふたり2