夢をかなえるための
「チケット」を手に入れる

おふたり

川島 とにかく取り組んでみることではないでしょうか。粗くてもいいので、いったん目標を立ててみる。そして何でもいいので取り組んでみる。

 僕の原体験は、小さい頃に劇団四季の『ライオンキング』を見てたことです。強烈な憧れを抱き、「出演したい!」と思ったんです。

田中 あの舞台に立ちたい、と。

川島 そのためにどうするかを逆算して考えてみると、まずはダンスができないといけない、歌も歌えるようになる必要がある、だからダンスと歌を習おう、と。そういうふうに、「ライオンキングに出演する」という目標を立て、それをかなえるための手段として、いろいろな習いごとに取り組んでいきました。

 ですから、目標を立ててとにかく取り組んでみる。富士山に登りたいなら登山靴を買ってしまうとか、ジムに通って基礎体力をつけるとか、山について勉強するとか、やるべきことはいろいろありますよね。それに、目標はうんと高くていいと思うんです。

田中 富士山へ登るために必要なものはこれとこれ……と、必要な要素を因数分解して、できることから始めていくのですね。

川島 ただ、逆もありだと思うんです。

 夢がなくても、いろいろな要素を自分の中に蓄えていけば、因数同士が反応したり、思いもよらない結びつき方をしたりする。新しいビジネスや、想像もしていなかった世界や夢につながることもある。「どこかへ通じるチケットをいつの間にか持っていたのか」と、あとで気づくこともある。

 僕は結果的に、ライオンキングに出演することができましたが、同時に、手段だったダンスが今ではむしろ生きがいになっています。所属しているTravis Japanでは、ダンスは外せない要素ですし、ダンスが人生を変えてきた瞬間が何度もありました。

田中 当初の思惑とは別の道が開けることもある。私も、夢をかなえたいというとき、「やりたいことを仕事にする」という在り方にそこまでこだわらなくていいと思っているんです。

 最初はやりたいと思っていなくても、やっているうちに好きになることもありますし、やっていることが「実はやりたいことだったんだ」とわかることもあります。

 川島さんは、手段として身に付けたダンスが、それ自体、その後の人生にとって大事なものになったのですね。Travis Japanのダンスは、アクロバットもあり、本当にすごいです。

世界中どこでも伝わる
ダンスという「言語」

川島さん2

川島 世界中どこでも、言葉なしに伝わるから、ダンスは言語だと思うんです。

 ほんのわずかな手の動きでも、そこに、視線を加えたり、感情を乗せたりすることで、表現がより強力になったりします。

田中 たしかにそうですね。言葉を使わずに世界中の人とコミュニケーションを取ることができる。一方で、Travis Japanの公演は、世界同時配信されることもありますし、メンバー全員が海外で生活したこともありましたよね。外国ではどうしても言葉を使わなければならない場面も多いと思います。実際、外国で言葉の壁を感じることはありましたか?

川島 むちゃくちゃ、大変でした。四六時中ダンスで意思疎通することはできないので、当然、英語で伝えなければならないシーンは多いです。

 どれだけSuicaにチャージしても飛行機に乗れるわけではありませんし、どれだけマイルがたまっても電車には乗れるわけではありません。それと同じで、そこでしか使えない、そこでしか通じないものがある。ですので、コミュニケーションの方法には使い分けが必要になってくるのだと思います。

田中 エッセイの中で、「言語とはチケットなんだ」と書かれていますね。

川島 はい。多様なチケット、つまり、多様な手段や要素を持っておいて、それをうまく使い分けることができれば、いろいろな場所に行けるし、自分を連れていってくれるのではないかと思います。

 チケットは多いほどいいですよね。人間は、コミュニケーションツールをいくつも持つことができる生き物です。笑顔だったり、目線だったり、表情ひとつとっても、立派なチケットになりうるはずです。