全米鉄鋼労働組合(USW)のデービッド・マッコール会長(72)は数カ月にわたり、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収に反対するよう組合員や政治家に働きかけてきた。同社の1万人の組合員にとって、日鉄より国内オーナーの傘下の方が良いと考えているためだ。
マッコール氏の活動が実を結ぶかどうかはまもなく分かるだろう。だが一部の組合員は買収を支持するようになり、組合の団結にひびが入り始めている。
昨年のクリスマスの1週間前に発表された141億ドル(約2兆1800億円)での買収案は、USWの反対で難しい状況に置かれている。ドナルド・トランプ次期大統領とカマラ・ハリス副大統領はいずれも選挙運動中にこの買収に反対を表明した。ジョー・バイデン大統領も反対しており、国家安全保障を理由に買収を阻止するかどうかを数週間以内に決定するとみられている。
マッコール氏とUSWの望み通りになれば、USWは組合員の雇用主との対立に直面することになる。USスチールのデビッド・ブリット最高経営責任者(CEO)は9月、買収が破談になればペンシルベニア州ピッツバーグ近郊にある最も古い工場を閉鎖する可能性が高いと述べた。そうなれば数千人の組合員が仕事を失う。
元機械工のマッコール氏は「売却する必要はない」とインタビューで語った。「USスチールは堅実で存続可能な会社だ。自力でやっていける」
だがそれほど確信を持てない鉄鋼労働者もいる。USスチールが閉鎖をちらつかせているモンバレー工場の従業員は特にそうだ。工場の組合の一部幹部は日鉄による買収を支持しており、賛同する組合員が増えていると話す。日鉄が老朽化した工場への投資予定額を30億ドル近くに引き上げると、工場周辺の町の指導層も支持を表明するようになった。