二番底か高値奪還か 最強株で勝つ!#8Photo:Bloomberg/gettyimages

“未曽有の危機”にある鉄鋼市況の低迷や日本製鉄による米USスチール買収の不透明感など、鉄鋼セクターには多くの逆風が吹く。しかし、各社の業績基盤は改善が進んでおり、実は非常に投資妙味が強い状況なのだ。特集『二番底か高値奪還か 最強株で勝つ!』の#8では、鉄鋼セクターの投資妙味について詳しく解説しよう。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)

日本製鉄の買収に暗雲
それでも鉄鋼が「買い」な理由

「USスチールは米国内で所有され、運営される企業であるべきだ」――。9月、米大統領選挙における民主党の候補であるハリス副大統領は、日本製鉄の米USスチール買収に反対する姿勢を鮮明にした。

 日本製鉄によるUSスチールの買収計画が混迷を極めている。かねて共和党の大統領候補であるトランプ氏も買収に反発しているほか、バイデン大統領も中止命令を出す方針が明らかとなった。日本製鉄はあくまで買収を力強く進めることを表明し、水面下での駆け引きを続けるが、現状はまさに四面楚歌といえるだろう。

 そもそも、買収騒動が注目されがちだが、現在の日本製鉄を取り巻く経営環境は決して芳しくない。

 悩みの種の一つが、鋼材需要の低迷だ。

 足元では国内の自動車生産の停滞による需要低迷のほか、世界を見渡しても中国では不動産不況により建築向けの鋼材需要などが減少している。片や供給面では、中国の鉄鋼メーカーが高水準の生産を続けており、市況価格は低迷。世界の鉄鋼メーカーがダメージを受けている状況なのだ。この市況環境を日本製鉄は「未曽有の危機」とまで表現している。

 主要国の景気停滞感、鉄鋼需要の低迷、日本製鉄の買収戦略危機――。さまざまな逆風にさらされている鉄鋼セクター。

 しかし、それでも「鉄鋼セクターには大きな投資妙味がある」と断言するのが、UBS証券の五老晴信アナリストだ。

 実は、これまで鉄鋼各社は、大きな戦略転換によって非常に強固な経営基盤を構築してきた。「市況に関係なく稼げる体質」に変貌を遂げている一方、株式市場では不透明感などから依然割安にとどまっており、そこに大きなチャンスが眠っているのだ。

 そこで、次ページでは、なぜ鉄鋼セクターが買いなのか、どの程度株価の上昇が見込まれるのか、また、各社が行ってきた戦略とは何かについて明かそう。

 さらに、鉄鋼セクターの中でもプロが着目する「特に注目すべき銘柄」についても解説。鉄鋼セクターの妙味について解明していこう。