二番底か高値奪還か 最強株で勝つ!#11Photo:Bloomberg/gettyimages

急速に進行する円高、米国景気の不透明感や中国市場の低迷、もしトラリスクを抱えた米国大統領選挙。自動車セクターを取り巻く逆風は数多く、株価は割安にとどまっている。その中でも、勝てる銘柄はどれなのか。特集『二番底か高値奪還か 最強株で勝つ!』の#11では、自動車セクターのリスクを総ざらいするとともに、“本命銘柄”について詳しく解説しよう。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)

日産自動車の“独り負け”
米中販売と為替がリスク

 営業利益は前年同期比99%減の10億円――。日産自動車が7月に発表した2025年3月期第1四半期決算は、惨憺たる結果に沈んだ。

 日産の業績が低迷している。その主因は、日産の主力市場である中国と米国での販売不振だ。中国では、政府によるEV(電気自動車)振興策などが背景となって、現地メーカーによる過剰生産が発生。販売価格を押し下げるほか、中国景気全体が振るわないこともあって、日本車各社が業績悪化の大きなダメージを受けている。

 片や、米国も深刻だ。強力な商品力を持つ自動車のラインアップに出遅れているほか、ブランド力の弱さなどもあって値引き販売から脱し切れていない。トヨタ自動車、ホンダらはハイブリッド車販売などにより米国では好調だが、その中で日産が独り負けを喫している状況だ。

 さらに追い打ちをかけるように、足元で急速に円高が進んでいる。日産は間の悪いことに、第1四半期決算で通期の想定為替レートを1ドル=155円に引き上げたばかりだが、直近では1ドル=140円台で推移している。通期の営業利益の見通しは5000億円としているが、想定レートと足元の為替水準の乖離が大きく、下方修正が濃厚なのだ。

 スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)による日産の長期債券の格付けは「BB+」。すなわち投資不適格である「ジャンク債」であり、PBR(株価純資産倍率)も0.3倍以下に沈む。「市場では退場宣告を受けているに等しい」(市場関係者)状態だ。

 だが、日産以外の自動車が全て順風満帆かといえば、そういうわけではない。円高シフトに加えて、中国市場の停滞、さらには米国景気の動向に加えて、トランプ氏とハリス氏が争う米国大統領選挙の結果という政治的なリスクなど、そのリスク要因はさまざまだ。

 では、その中で「買える株」なのはどの銘柄だろうか。次ページでは、自動車業界のリスクを総ざらいするとともに、その結果見えてくる有望株の実名とその理由を詳しく解説していこう。