既存の対策に限界はないのか
ゴールの設定を明確にせよ
筆者は、ゾーニングでは限界があると考えます。ツキノワグマは主に本州と四国の山地に生息しており、それは環境省の調査によると本州の約45%に当たる地域だそうです。
1頭のクマが生息するために一定の面積が必要な訳ですが、基本的に頭数が2倍になれば2倍の面積が必要になるそうです。もし、全く捕獲をせずに20%の自然増を許したまま、ゾーニングのみで対応した場合、単純計算ですが4年間で個体数は倍増することになります。
これで本当に、捕獲を行わずにゾーニングだけで万全の対策が取れるのでしょうか?つまり、本州で45%の生息域に今後も収まるのかな?と大きな疑問がわきます。
プロジェクトマネジメントの観点では、何よりゴールの設定が大事です。ゴールが決まって初めて、プロジェクトのアクションが決まってくるからです。クマ対策に関しても、例えば「排除地域」での出没を一定数以下(可能であればゼロ)にするなど、もっと明確かつ期限も区切ったゴールを設定することが大事なのではないでしょうか。
本州のツキノワグマについても、各県で個体数管理の導入を検討する必要はないのでしょうか? 加えて、市街地でのクマの出没に対応できるように、国は鳥獣保護管理法の改正を検討すべきではないでしょうか。
もちろん、野生動物保護の観点も重要です。しかし、クマは基本的にはライオンと同じ食肉目に分類される動物です。つまり、クマが住宅地を徘徊する状況は、ライオンが住宅地を徘徊するのと同じくらい危険なことだと考えられるはずです。
ドングリの豊作に頼ることなく、人身被害が出る前に、クマ対策について抜本的な改善が進むことを望みます。
環境省:クマ類による人身被害について [速報値]
https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/injury-qe.pdf
環境省:堅果類の着花結実情報について(令和6年4月22日時点)
https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/ketujitu.pdf
NHK:猟銃訴訟 1審判決取り消し 公安委の処分認める判決 高裁
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20241018/7000070591.html
TBS NEWS:クマ駆除に過剰クレーム「ただクマを殺しているだけだ」ハンターを特定し非難するケースも
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/855042?display=1
WWF:日本に生息する2種のクマ、ツキノワグマとヒグマについて
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/2407.html
新潟県立浅草山麓エコ・ミュージアム:里山のツキノワグマ 42 〜クマのナワバリの面積に関する考察 生息密度と生存戦略〜
https://www.eco-museum.jp/2020/10/5325.html