トランプ政策、新興国の貿易に明暗Photo:Joe Raedle/gettyimages

 投資家はドナルド・トランプ次期政権の混乱を招きかねない政策に身構えつつ、どの新興国に投資するかの見極めを急いでいる。

 トランプ氏の政策には関税の引き上げや減税が含まれると予想されており、ドル高とインフレの長期化を招く可能性がある。アナリストによると、このため中国やメキシコなどの輸出大国は投資家に危うく映る一方で、インドやブラジルなどが潜在的勝者として浮上している。

 トランプ氏の政策が世界に与える影響について投資家がより明確な見通しを得るには、「多くのことが一定の順序で起きる必要があるだろう」。「グローバルX ETF」の新興国市場戦略責任者マルコム・ドーソン氏はそう話す。関税の引き上げなどの予想される政策が、最大の新興国である中国が景気回復に苦戦している時期に実施されることになると同氏は指摘した。

「新興国市場はいい状況にあるはずだが、人々がこうした個別の要因の一つひとつに反発する余地は間違いなく大きい」

ドル高の影響

 エコノミストの中には、「トランプ関税」が減税などの政策と併せて実施されれば、米国で物価が上昇し、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ余地が制限されるとみる向きもある。そうなればドル高が続き、新興国市場にはプラス・マイナス両方の影響が及ぶだろう。

 ドル高が進む中、MSCI新興国市場指数は今月5日の米大統領選以降、下落傾向にある。新興国市場の通貨を含む16通貨のバスケットに対するドルの価値を示すウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)ドル指数は上昇を続けている。

「ドルが強いときは、金融環境が引き締まり、貿易金融や輸出はより複雑になり、より多くのコストがかかるようになる」。アメリカン大学のバレンティーナ・ブルーノ教授(金融論)はそう話す。

 ハーバー・キャピタルのポートフォリオマネジャー、ジェイク・シューマイヤー氏は、ドル高を理由に新興国債券への投資を削減したと話した。

 ドル高について同氏は「私たちには恐怖だ」と話す。「新興国市場はドルがより強くなるという事実に対処しなければならなくなるだろう」