原油相場「トランプ復権」でも方向感定まらず、米エネルギー政策や中東情勢の不透明Photo:PIXTA

原油相場は9月以降、横ばい圏で推移している。中東情勢や中国景気など相場を一方向に動かす材料とはなっていない。トランプ氏の大統領復帰によるエネルギー政策変更、中東政策、中国政策などの相場への影響は読み切れない。方向感のない展開が続きそうだ。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)

ハリケーン、中東情勢の押し上げ
効果は一時的だった

 原油相場は、10月上旬に米国産のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)で1バレル当たり78ドル台半ばまで回復したが、11月中旬には再び70ドル割れと一進一退が続いている。

 相場の変動材料を振り返ると、9月中旬にはハリケーンの影響で相場は押し上げられた。また、17~18日に相次いだ通信機器の爆発についてレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの指導者ナスララ師がイスラエルによる「宣戦布告」と非難し、報復を明言する中、地政学リスク懸念も高まった。

 24日には、中国が金融緩和や不動産市場対策を打ち出したことが好感された。イスラエルとヒズボラとの戦闘が激化していることも支援材料だった。

 しかし、原油の上値は限られた。25日には、前日に発表された中国の景気刺激策に対して好感する動きが一服し、景気浮揚には力不足との見方が優勢となり、原油売りにつながった。ハリケーン「ヘリーン」の進路が米石油施設集積地域からそれる見込みとなったことも相場の下押し材料となった。

 26日は、サウジアラビアによる増産報道を受けてやや下落幅が大きくなった。英紙フィナンシャル・タイムズによる報道では、サウジは1バレル=100ドルの非公式な価格目標を取り下げ、12月から増産に踏み切る予定だと報じた。先に「OPECプラス」が発表した12月からの増産計画が実施されるとの観測がより強まったとみられる。

 次ページでは10月以降の相場を振り返るとともに、先行きを検証する。