原油相場は米利下げで下落も一進一退、米中景気減速や地政学リスクなど強弱材料が交錯Photo:PIXTA

米国や中国経済の減速傾向は原油相場にとって売り材料。一方で、中東などの地政学リスクの高まりは相場を押し上げる。双方の綱引き状態が続き、今後も原油価格は一進一退の動きとなりそうだ。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)

7月下旬は中国景気への懸念で下げ
中東の地政学リスクの高まりで上昇

 原油相場は、7月下旬~8月下旬にかけてWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)で1バレル当たり70ドル台後半を中心に一進一退の推移を続けていたが、9月に入って、下値を試す動きとなった。もっとも、相場を支える材料もあり、下落一辺倒とはならず、再び一進一退の動きとなると見込まれる。

 相場を動かした材料を振り返ってみる。

 7月26日は、中国需要の鈍化懸念やガザ停戦への期待が継続したことが相場を下押しした。加えて、中国人民銀行がMLF(中期貸出制度)1年物の金利を引き下げたことは、むしろ同国景気への懸念を強めることになった。

 週明け29日は、27日にイスラエルの占領地ゴラン高原への攻撃で12人が死亡し、イスラエル軍がレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに対する報復攻撃に踏み切ったものの、イスラエル側は中東での「全面戦争」は望んでいないとしたため、地政学的緊張の高まりは回避され、原油は続落した。

 31日は、ハマスの最高指導者ハニヤ氏が暗殺されたことで中東地域が一段と不安定化するとの懸念から原油が大幅に買われた。米EIA(エネルギー情報局)の週次石油統計で原油在庫の減少幅が市場予想を上回ったことも買い材料だった。米国産のWTIは4.3%高、欧州北海産のブレントは2.7%高だった。

 次ページは、8月以降の相場動向を振り返りつつ、先行きに影響するポイントを分析する。