「本当の生きがいって何?」→漫画家の見つけた答えが胸にじんわりくる同書より転載

60年以上続いた4コマ漫画『小さな恋のものがたり』の作者・みつはしちかこ氏。14年前に夫を見送った彼女は現在、83歳のひとり暮らしを楽しんでいる。そんなみつはし氏が、自らの過去を振り返って見いだした「ほんとうの生きがい」について綴る。※本稿は、みつはしちかこ氏『こんにちは!ひとり暮らし』(興陽館)の一部を抜粋・編集したものです。

年を取ることは
くり返し生きること

 北風の中で裸になってふんばっている木を見ると、“オー!がんばってるナ”とまぶしく思います。

「あけましておめでとう!1年のはじめが、厳しい寒さのてっぺんにあることをステキなことと思わなくっちゃ!ネッ、身をひきしめて、もう一度、心に冬の神木を描こう!」

 ところで、この木は、一体何歳になるのでしょうか?少なくともわたしより倍以上、年上のはずです。帽子もかぶらずコートも着ずに、裸で冬に立ち向かっているのです。そして、また近々蘇ろうと準備をしているのです。

 最後の一葉は、ココロの中で最初の一葉となるはずです。サァ、わたしも新しい気持ちで“はじめの一歩”。

 年をとることはくり返し生きること。たくさんの思い出たちから勇気をもらって、より豊かに生きることではないでしょうか?ナンテえらそうなこと言っても、わたしにとって冬は一番めげやすい季節。怠けたい、逃げたい季節なのです。だからこそ、「出てこい!勇気!」と自分に呼びかけるのです。

 そして、わたしに勇気をくれるもののひとつ。今はもうほとんど見られなくなった、赤いベレーをかぶったずん胴ポスト。

 寒のポストに身投げのごとく速達便

 そ、あれはいつも、わたしの清水の舞台でした。あれは真っ赤になって立ち往生しているわたしの青春像そのものです。

 消え入りたい思いなのに、なぜか消えず、反対に飛び出していったのでした。気づかないでほしいと念じていながら、「わたしはここ!」と叫んでいたり……。

 はじめての片思いは、ほとんど祈りに近く、あのころ、自分は死んでもいいから相手を生かしたい、という思いに陶酔し、見返りを望まない純粋な愛と思い込んでいましたが、今思うと、あれは強烈な自己愛のはじまりだった、ということに気がつくのです。片思いに導かれて、わたしはどんどん自分の可能性を見つけていったのですから。

「生きがい」をテーマに原稿を
依頼されて行き詰まった理由

「本当の生きがいは、どこに?」などというモノモノしいテーマの原稿依頼を簡単に引き受けてしまったのは、なぜだろう?と、締め切り日が迫って、慌てて首をかしげてみるわたし。

 ああ、“生きがい”という言葉が、瞬間、軽く、ささやかなものと感じられたのです。